「南アフリカ共和国でアパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃され22年が過ぎたが、黒・白人間の“障壁”はまだまだ大きい」
そう語るのは、米シアトル生まれの写真家ジョニー・ミラー(Johnny Miller)氏。ミラー氏は最近、南アフリカのケープタウンで新しいプロジェクトを開始した。プロジェクトのタイトルは「unequalscenes(不平等な場面)」。そのプロジェクトの進行過程で撮影された写真について、ミラー氏は次のように話す。
「ドローンでケープタウン市内の景色を撮影してびっくりしました。建築物(の様子)からアパルトヘイトの残滓が垣間見えた。富裕層が住む地域と貧困街が明確に区分されているのです」(ミラー氏)
ミラー氏が撮影した写真を見ると、片側には緑の中に高級住宅が広々と位置している。もう一方には、古く、小さな住宅が密集している様子を見てとれる。
「南アフリカ共和国の人種差別について、新しい視点を提供したいと考えていました。子供たちと一緒にこの写真を見ながら、貧富の格差について議論するのが良いでしょう」(ミラー氏)
ミラー氏は、「南アフリカは非常に特別な歴史を持っている」としたうえで、「都市計画者および住宅の管理者は、私の写真を見て連絡してきた。“肯定的”なコミュニケーションが始まった」とコメントしている。
ドローンがもたらす空からの視点は、ジャーナリズムに大きな変化を与えている。以前には、シリアなどの内戦地域を撮影したロシアのクリエイターの動画が、世界で大きな反響を呼んだ。今後、ドローンを使ったジャーナリズムやアートが、既存のモノの捉え方を破壊し、社会に新しい形の影響をもたらすかもしれない。