WWFとグーグルの「ドローン密猟監視」が暗礁か...見つけても逮捕できず

ロボティア編集部2017年5月2日(火曜日)

 アフリカ大陸では、密猟が深刻な社会的課題として浮上している。2007年から2014年までの間に、象の全体数のうち約30%が消えた、また2015年の1年間で少なくとも1338匹のサイが乱獲されたという一部統計がある。しかも、密猟グループの犯行テクニックは日毎に発展しており、防犯のための努力と措置はほとんど効果を上げられずじまいだそうだ。

 2014年に公園内の象50頭、および2匹のサイが密猟されたマラウイのリウォンデ国立公園(Liwonde National Park)は、翌年の2015年からアフリカン・パークス(African Parks)に助けを請うた。アフリカン・パークスは、密猟に脅かされるエリアを支援する非営利団体である。公園側から要請を受けた同団体がマラウイで作戦開始して以来、1万8000以上の密猟罠を押収。逮捕実績は100件以上にのぼっている。

 アフリカン・パークスは従来の方法で摘発を進めることに加えて、ハイテク機器を使った対策にも乗り出している。同団体の南アフリカ共和国チームには、ドローンチームが発足した。資金の提供を行ったのは、世界自然基金(World Wildlife Fund)とグーグルで、その総額は500万ドルとなる。

 現在、UAV&Drone Solutionsという企業が、公園内でドローンを使った監視活動に協力しているという。同社は、夜間であっても15マイル以上にわたりドローンを飛行させる認可を得た。これは、アフリカでは初めての事例だそうだ。密猟者のほとんどは夜に動くが、公園側には夜間にパトロールを行うリソースがなかったため、ドローンが非常に便利な監視・摘発手段になると期待されているという。

 2017年4月現在、アフリカ大陸で政府公認のもとにドローンが運用されているエリアは、南アフリカとマラウイ、ジンバブエ。加えて、今後はボスニアでも運用がはじまる予定だ。アフリカで運用されているドローンに派、翼にカメラと映像送出機、遠隔操縦装置などが搭載されており、8時間以上の飛行が可能なものもあるという。

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 なお密猟の監視にドローンが使用されるのは今回が初めてではない。数年前、ドローンが世に登場し始めた当初、空中からの監視というアイデアは野生保護活動家らから絶大な支持を得たそうだ。が、実際にはそれほど効果をなさないとして失望の的となった。

 その理由としてはまず、公園関係者が野生環境に適さないモデルのドローンを購入してしまったり、正しく使えなかったため。現在、どんな環境・条件でも一律にタスクをクリアできる汎用性の高いドローンはどこにも存在しない。そのため、用途にあった機体やソリューションを地道に模索すべきなのだが、使用する側にはその知見がなかったことになる。なかには、とにかく高価な機体であればよいと“散財”してしまう公園関係者もいたと言われている。

 もうひとつの理由は、ドローン監視には関連機器やソフトウェアが必要で、その費用が保護団体の予算をはるかに上回るという点だ。アフリカでは、密猟監視用のドローン運用コストが月額10万ドルほどかかるとも言われている。費用対効果が決定的に実証された例もほぼ皆無だという。

 ちなみに、アフリカではドローン監視によって逮捕された密猟者は一人もいないそうだ。ドローンチームが密猟者を発見しても、地上に犯罪者を取り締まるための支援体制が整っていないというのがその決定的な要因だ。クルーガー国立公園では一度、ドローンチームがサイの密猟者らを発見。公園管理者に通達した。しかし、「付近にレンジャーがない」という回答があったきり、犯罪グループを取り逃がしてしまったというエピソードが報じられている。ドローンチーム関係者は、「公園側が望むことをしているのに、バックアップがないというのは呆れてものも言えない」と訴えているそうだ。

 一方で、広大な敷地に無作為にドローンを飛ばし、相対的に米粒ほどの大きさの密猟者を見つけるという作業は非効率的だという意見もある。加えて、オペレータたちは四六時中、監視画面を眺めていなければならない。つまり、人間とテクノロジー間の連携が上手くいっていないという現場の事情がある。そのため、今後はソフトウェアの精度向上と、データ分析などの手法を組み合わせたタスクの効率化が急務とされている。

 アフリカにおける密猟者との戦いで、ドローンはその真の威力を発揮できるだろうか。具体的な戦略、そしてテクノロジーとの連携を可能にする人間側の応用力が、野生動物保護の現場に求められている。

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