米大学がドローンでバイオサンプル配送テスト...片道64km

ロボティア編集部2016年8月18日(木曜日)

 ドローンの活用分野が、医療やヘルスケアの分野にまで拡大している。米ストーニーブルック大学(Stony Brook University)の研究チームは7月、僻地に住む人々のもとにドローンを飛ばし、医療用血液サンプルを収集する実験をマダガスカルで行った。この実験は、マダガスカルの中心部に位置するメディカルリサーチセンターから、64km離れたエリアにある村にドローンを飛ばすというもの。歩くと10時間かかる距離だが、ドローンは1時間でポイントに到着することに成功した。

 また、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の研究者は6月、ドローンを利用して、アフリカや東南アジアなどの僻地にワクチンを輸送、また疾患を監視するシステムの運用実験を行っている。同大学の研究者らは、ドローンを使って僻地の人々のバイオサンプル(血液や尿)を収集することが、風土病の拡散防止に役立つと考えている。

「実験のコンセプト自体は簡単ですが、細かい技術を実装するのは容易ではない(中略)先に町に派遣された健康管理者が、血液サンプルをドローンに載せる作業をするが、これらのシステムは結核や風土病の調査に役立つだろう」(ストーニーブルック大学のピーター・スモール(Peter Small)教授)

 研究者は今回の実験に、ドローンメーカー・ヴァーユ(Vayu)が開発したドローンを活用した。このドローンは固定翼型ドローンで、GPSを搭載しており、水平飛行だけでなく、垂直離着陸も可能である。64kmの距離を飛行した後、再び出発地点に戻ってくることができるほどの大容量バッテリーが搭載されている。

 近年、ドローンを使った医薬品輸送実験が増加傾向にあるが、ほとんどドローンにはパラシュートが搭載されており、医薬品を落とす形を取る。これは、かなり離れた地点にあるドローンを遠隔操作で離着陸させることに、技術的な難しさがあるからだ。ただそのような方法では、バイオサンプルを収集するには限界があった。

「次の研究のステップは、ドローンを利用した病気監視システムを構築すること(中略)僻地に特異な病気が拡散した場合、ドローンで迅速にバイオサンプルを収集し、解決策を模索することになるだろう」(研究関係者)

 6月には、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の研究者が、ドローンを利用したワクチン輸送・病気監視システムの研究論文を発表している。今後、ドローンを利用した遠隔医療の可能性は高まると見られている。