"思考"で複数のドローンを同時に飛ばす技術が公開される

ロボティア編集部2016年7月17日(日曜日)

 米アリゾナ大学(The University of Arizona)の研究者たちが、人間の脳から発せられる信号で、複数台のドローンを同時に操ることができるシステムを開発・公開した。

 これまでも、脳の電気信号を利用してロボットをコントロールする技術、すなわち「ブレインマシンインターフェース(BMI、Brain-Machine Interface)」の研究事例は少なくなかった。今回の研究がユニークなのは、同時に複数台のロボットやドローンを操縦できるかもしれないという点だ。

 研究者が開発したBMIシステムの中核となるのは、操縦者が頭にかぶる機器だ。同機器には128個の電極が接続されていて、脳が命令を下す際に発生する電気信号を記録する。操縦する人が手を動かしたり、思考すると、特定の部位に光が点滅するようになっている。

 例えば、機器を頭に被ったパイロットが「ドローン同士が接近しないようにしたい」と“思考”すると、脳の特定の部位から発せられる電気信号がコンピュータに記録され、その後、無線通信システムを通じてドローンに伝わる。信号を受信したドローンは、それぞれの飛行位置を守り、接近しないように飛行する。研究者は、「移動する物体の軌跡を記録することができるモーションキャプチャシステムを採用して、ドローン同士の飛行距離を調節することができるだろう」としている。

 現在の研究グループが開発したBMIシステムは、最大4基のドローンを操縦することができる。技術が完成すれば、パイロットが“考える”だけで複数台ドローンを組織的に飛行させ、災害現場や戦場で生存者を見つけたり、複雑な任務を遂行することができるようになると期待されている。

 アリゾナ大学のパナジオティス・アルテミアディス(Panagiotis Artemiadis)博士は、「複数台のロボットを操縦する際の人間の脳の活動を理解することが、今回の研究の目的(中略)人とロボット間の相互作用を向上させる方法を見つける」としている。研究者たちは今回の研究を行うために、2014年に米国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)から86万ドル(約9000万円)の予算的な支援を受けている。

ドローン_ブレインマシンインターフェース2
photo by arizona university

 なお、研究者が今回開発したBMIシステムは、パイロットが変わるたびに新たに調整する必要がある。脳から発信される電気信号は人によって異なるからだ。また同じ人であっても、脳の電気信号は体調に応じて微妙に変化する。研究者はこの調整を行うにあたり、人工知能(AI)に活用されているディープランニング技術を採用する計画だともいう。

「ここ20〜30年の間に、ひとつのマシンに対するBMI技術は飛躍的に発展した(中略)今後は、一人が複数のマシンを脳でコントロールする研究に進む時だ」(アルテミアディス氏)

 研究者たちは今後、パイロットが複数のドローンを操縦しながら、そのドローンの操縦以外の考えた時に何が起こるかについて研究を進める計画だ。長期的には、複数人が複数台のドローンを効率的に操縦するためのシステムを研究することも課題としている。