世界的に深刻化する水不足...IoT技術をどう活用する!?

ロボティア編集部2016年7月26日(火曜日)

 関東地方の水不足が深刻化している。先月、6月としては29年ぶりに、利根川水系での10%取水制限が始まっており、プール営業など日常生活だけでなく、産業活動にも影響が及びそうだ。

 昨今の水不足は日本だけでなく、世界中で懸念されている。今年5月に気象庁が発表した報告書によると、東南アジアでは 2015年春以降、12か月降水量が場所によって平年の60%を下回るなど、降水量が少ない状態が続いているという。

 地球温暖化による異常気象や人口増加・産業発展による水需給の拡大など、水不足の原因はさまざまだ。今後、水を供給するためのインフラ需要が爆発的に伸びることが予想されており、水ビジネスは国を挙げた一大産業となりつつある。

 イギリスの水専門調査機関であるグローバル・ウォーター・インテリジェンス(Global Water Intelligence)によると、2025年には世界の水ビジネス市場は8650億ドル(約92兆212億円)にまで増えて行くと予想されている。また、韓国の大手証券会社である、未来アセット大宇証券の発表によると、世界の水ビジネス市場は2018年に6890億ドル(約73兆2900億円)にまで膨らむ見通し。2013年には5560億ドル(約59兆1400億円)規模だったことに比べると、その成長ぶりは顕著だ。

◼シンガポール「三つの水」で完全自給も視野に

 ほとんどの水資源を隣国マレーシアに頼ってきたシンガポールが、水自給率向上のために掲げた「ニュー・ウォーター」政策。テクノロジーを駆使した水処理技術を、自国産業の競争力強化につなげる戦略が軌道に乗っている。

 シンガポールは東京23区と同じぐらいの面積の島で、降水量は多いが、国土が狭いため保水力が乏しく、マレーシアから水を輸入してしのいできた。政府は水問題の解決を最重要課題とし 、三つの取り組みによって水供給システムを構築した。第一に貯水である。

人工知能_水不足2
photo by asiagreenbuildings.com

「雨粒を一滴たりとも無駄にしない」方針から貯水池を17カ所に拡大し、国土の 3分の2の地域に降る雨を確保できるようにした。ただし、平坦な国土であるため、大規模なダムによるものではなく、多くは、河口や入江を閉鎖することによる淡水貯水池となっている。

 第二に、通常の下水をマイクロフィルターと逆浸透膜技術でろ過した上で、紫外線で殺菌処理を施しリサイクルした再生水「NEWater(ニューウォーター)」の供給を強化している。ニューウォーターはミネラルがまったく入っていない超純水として、半導体の製造など工業用水としても使われているほか、飲料水として飲めるレベルまで浄化され、一部ではすでに貯水池を通って、家庭の水道水へと流れ込んでいる。いまやシンガポールで消費される水全体の、15%をニューウォーターが占めている。

 そして最後に、海水淡水化の取り組みだ。シンガポールでは現在、西部トゥアスで2カ所の海水淡水化プラント(製造機)が稼働しており、国内の水需要の最大25%を賄える。そのうえシンガポールの水道庁に当たるPUB(公益事業庁)は昨年、国内で4番目の海水淡水化プラントを、湾岸部マリーナ・イーストに建設するにあたり、エンジニアリング会社の入札を行うと発表した。

 すでにトゥアスに建設中である第3の海水淡水化プラントは、2017年に完成する予定だ。シンガポールでは、全水需要に対し、2020 年までに 25%、2060 年までに 30%が、海水淡水化により供給される見込みとなっている。

 シンガポールにおいては、 今後、マレーシアからの輸入に頼らず、完全自給しようとする姿勢が鮮明に感じられる 。また、その過程で生まれた新たな技術を、ビジネスモデルとして確立しようとする政府の戦略的な技術政策が見て取れる。成長を続けるシンガポールのこの動きは、今後ますます加速していくはずだ。

水質確認アプリ_k-water
k-waterの水質確認アプリ photo by k-water

■「スマート・ウォーター・シティ」目指す韓国

 韓国もまた、国を挙げて水産業に対する取り組みを行っている。政府は「スマート・ウォーターシティ」の実現を目指す。「スマート・ウォーターシティ」とは、情報通信技術(ICT)を駆使して水道水供給の全過程の水量と水質を科学的に管理し、いつでも水道水の情報を一目で確認できるような管理(Smart Water Management:以下SWM)システムが実現された地域をさす言葉だ。

 現在、それらシステムは、京畿道坡州市(キョンギド パジュ市)と慶尚北道高靈市(キョンサンブッド コリョン市)に導入されており、高い成果を上げている。 特に、スマートフォンのアプリや電子パネルで水の使用量、水質、断水情報等をリアルタイムで確認できることから、水道水に対する不安が解消され、少しずつ信頼度が高まりつつある。

 SWMシステムが設置されているマンションには、貯水槽型水質検査センサーや世代別に水道水使用量を遠隔検針するスマート流量調整システムなどが構築されている。水質汚染物質を自動的に排出する自動排水管などを通じて、各家庭の水質を検査する「ウォーターコーディネート」と屋内水道管の状態を点検して水道管洗浄までしてくれる「ウォータ
ー・ドクター」サービスを受けることができるそうだ。定期的に実施する貯水槽と蛇口の水質検査の結果は、随時公開されている。

 各家庭の水質状態と水道使用量をいつでもリアルタイムで確認することができる上に、水質を理解することで水道水を安心して飲むことができ、効率的に利用できる環境が作られる。そればかりか、水質に対する信頼と飲用の向上は、浄水機の利用やミネラルウォーターの購入費用削減につながり、経済的にも効果的であると期待されている。また、使用量を意識した水の節約も、自然に実践されるものとみられている。

 併せて、このようなSWMシステムが徐々に拡大された場合、飲用環境の改善はもちろん、昨今の干ばつや異常気象による国家的な水資源問題の解消にも役立つとして、注目されている。韓国水資源公社(KOWACO:通称K-water)はSWMシステム拡大のため、韓国の大手携帯通信業者であるSKテレコムと業務提携を締結したと発表した。

 日本では経済産業省が今年9月、水インフラの維持管理にIoTを活用する実証試験を始めると発表した。いまや日本の水道施設及び下水道施設はその多くが老朽化する時期に入っており、これらに起因した事故発生や機能停止を未然に防ぎ、水資源を有効かつ適切に利用していく必要があるからだ。日立製作所やNTTデータと協力し、浄水場などをネットワーク化して水道事業者のデータを集約するプラットフォームを構築。人工知能(AI)がデータ解析しながら設備寿命や薬品投入量を算出する。プラットフォームは他の社会インフラへの展開や、輸出にも生かしたい考えだ。

 また、節水型のトイレ、シャワーヘッド、洗濯機、食洗機など、快適さを維持しながら、従来製品に比べて20~30%も水を節約する製品が日本では次々と開発されている。そればかりか、日本の海水淡水化技術は世界的に見ても高いレベルにある。今後、ビジネスとしての成功や国際的な貢献など、目に見える形での水技術の発展が期待されている。