ロボット時代の新しい仕事・倫理的技術弁護士ってなに?

ロボティア編集部2016年9月19日(月曜日)

 ロボット時代に新たに登場する仕事には、どんなものがあるのだろうか。現在、そのうちのひとつとして期待されるのが「技術倫理弁護士」(Ethical Technology Advocate)だ。これは、倫理的判断を元に人間とロボットの衝突を防ぎ、シナジー効果を生みだす仕事である。なお、倫理的技術弁護士は、マイクロソフト社が学生にすすめる「10年後の未来の仕事」のひとつでもある。

 倫理的技術弁護士は、人工知能を搭載されたロボットが活用される分野で、人間とロボットの仲介者の役割をする。主な業務としては、ロボットとロボットメーカーが守るべき道徳や倫理規則を定めること。また、ロボットと人間の微妙な力関係を調整することとなる。

 マイクロソフトの最高経営責任者サティア・ナデラ(Satya Nadella)氏は、人工知能の開発で最も重要な次のステップは、ロボット設計の倫理的枠組みをつくることだと指摘する。また、米ロボット学者、および芸術家であるアレクサンダー・レーベン(Alexander Reben)氏は、「(ロボットに関する倫理的問題)は、ロボット革命時代がはじまるなかで、最も大きな懸念のひとつになるだろう」と示唆する。彼は最近、人に害をもたらすか否か、自ら選択するロボットを開発・発表したことがある。 「ファーストロウ(First Law=第1原則)」という名称のこのロボットは、人が指を差し出すと針で指を刺すかどうかを自ら決定する。

 ファーストロウという名称は、1942年にSF小説家アイザック・アシモフ氏が発表した、ロボット工学三原則からインスピレーションを受けたもの。アシモフがつくった3原則のうち、最初の原則は「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない」というものである。レーベン氏は、「私は人間に害を及ぼすロボットが存在するということを証明した。私たちは、コントロールできない人工知能の恐怖に相対する人々が必要だ」と述べている。

ファーストロウ_ロボット
photo by youtube

 倫理的技術弁護士のもうひとつタスクは、ロボットにものごとを教える、すなわち教師の役割を果たすことだ。つまり、ロボットに人間の日常言語や行動、微妙なニュアンスの違いを区別・理解する方法を教えるというもの。この教師の役割がしっかりと果たされることで、ロボットと人間は、仲間として、また職場の同僚として互いを信頼しつつ仕事をすることができる。

 Googleの自然言語研究者であるフェルナンド・ペレイラ(Fernando Pereira)氏は、「人間の言葉や行動には曖昧な点がかなり多い。つまり、ロボットは人間レベルの常識を備えなければならない。このため、長期にわたる指導が必要である。そのような“地図”をくれる人間教師がなければ、ロボットは微妙な問題を扱うことに失敗するだろう」と述べている。例えば、病院への導入が期待されるロボット看護師も、人間の教師がいなければ、患者の言葉、行動、気持ちを理解できず、人間の隣に寄り添うことが難しい。そのように、ロボットにいかに人間の常識や感情を伝えるかが非常に重要になってくる。

 もちろん、法律および教育という複合的な仕事ではなく、それぞれを個別に担う新しい仕事が生まれる可能性もある。ロボットが導入される分野も細分化されていくだけに、その領域も広範囲に及ぶはずだ。