身体をサポート、”思考(脳波)”で動くロボットの開発進む

ロボティア編集部2015年5月10日(日曜日)

思考で動くロボット
ジャン・シャーマンさん photo by youtube

2013年にピッツバーグ大学のアンドリュー・シュワルツが率いる研究者たちによって開発された技術が世間を驚かせた。その技術とは、“思考”で動くロボットアームだ。

脊髄小脳変性症で、首から下の身体部分がまひしてしまったジャン・シャーマンさん(当時53歳)が、脳の運動野に埋め込まれた2つのセンサーを通じて、思考によってロボットアームを操作し、板チョコなどの物体を掴んで動かすことができるようになった。その成果は医学専門誌『The Lancet』で発表された。当時、ピッツバーグ大学の研究者らは、ロボットアームに触覚を設置し、より細かい作業を追求するとしていた。

あれから2年、韓国では高麗大学の脳工学科教授イ・ソンファン氏らによって、思考で動くロボットが開発された。同ロボットは、障害を抱えている本人の思考だけで、ロボットをリハビリに直接利用できるというメリットがある。医者が家に通う必要がなく、患者も病院に来る必要がない。現在は、行きたい方向に歩く程度だというが、今後は頭の中の考えを自由自在に動きとして反映できるロボットを開発する予定だという。

イ・ソンファン教授は、韓国メディアの取材に答えて次のように話している。

「今後の課題は、人間の脳から出る数多くの脳派の中から、必要な脳波を選んで信号化する作業が必要。時間がかかるかもしれないが、人間とロボットの間の距離は少しずつ縮まっています」

脳波で動くロボット
脳波で動くロボット photo by edaily

人間の身体もしくはその能力を補うロボットは、トラブルによる安全性などの面においてリスクが懸念されている半面、人間の力を何倍にも引き出してくれるものとして期待されている。そのような身体補助ロボットは、障害を抱えた人たちだけに需要がある訳ではない。高齢化が進む先進国においては、高齢者をサポートする上でかかせない分野になるかもしれない。例えば、介護の現場では「老々介護」という言葉が流行している。核家族化が進み、老後の面倒を見てくれる家族がいないため、高齢者が高齢者を介護するという状況が一般化しつつある。介護は重労働である。扱う高齢者の身に負担がないロボットが普及すれば、老々介護問題も“技術的”に解決できるだろう。

ロボットと安全性というのは、同分野の永遠のテーマと言えそうだが、イ・ソンファン教授が話す通り、「人間とロボットの間の距離が少しずつ縮まっている」のならば、いつの日かロボットを気軽に装着する局面は増えていくのかもしれない。