太陽光エネルギーのみで動く世界初の飛行機「ソーラーインパルス」で地球を一周したベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)氏(58)とアンドレ・ボルシュベルグ(André Borschberg)氏(63)が、スイス・ジュネーブで記者会見を行った。その場でふたりは、太陽光エネルギーだけで動くドローンを飛ばす計画だと明らかにした。
スイス生まれの精神医学者であり、冒険家であるピカール氏は、1999年に史上初の熱気球世界一周に成功した。 2003年には空、軍パイロット出身のボルシュベルグと意気投合。ソーラーインパルス財団を設立。数年間のテストフライトの末、昨年3月には「ソーラーインパルス2」に乗って、アラブ首長国連邦アブダビ空港を出発。505日間にわたり、南京、ハワイ、ニューヨーク、カイロなどを通過し、去る7月26日にアブダビに戻ってきた。
ピカール氏は、「ソーラーインパルスの世界一周は、クリーン技術を促進するためのものだった」としながら、世間の関心を集めることに成功したので、次は太陽光発電技術を実際に応用する時だとコメントした。
太陽光ドローンは、途中で電池を交換する必要がなく、効率的、かつ長時間にわたり飛ぶことができる。ホームページに公開された計画によると、ドローンの翼は合計約40mで、ソーラーインパルス(72m)よりも小さい。ただ、50㎏ほどの機器を載せて6ヶ月間休まず飛ぶことができる仕組みになっている。人が乗らないので、空気が希薄な成層圏でも、天候に関係なく飛行することができる。ちなみに、ソーラーインパルスの飛行時、ふたりを最も苦しめたのは、急激な気温の変化と悪天候だったと言われている。
ピカール氏は「収益性も考慮している」としたが、最終的な目標は金銭的な稼ぎではないようだ。太陽光発電技術に収益性があることを投資家に示すことで、再生可能エネルギーを「持続可能な産業」とするのが真の目的だ。
一方、ボルシュベルグ氏は今年初め、スイスのメディアのインタビューに対し「少なくとも3年以内に、太陽光ドローンを飛ばすことができると思う(中略)上空で地球を監視する役割をするだろう」と趣旨を説明している。
気候や環境の変化を捕捉するという点においては、定められた軌道を飛ぶ衛星よりも、ドローンの方が有用だとする見解もある。ピカール氏は「クリーンエネルギーに対する認識を高め、このエネルギーが化石燃料よりも優れているということを示す」と意気込みを語った。
現在、ドローン業界では、バッテリー持続時間や、飛行時間を延ばすための努力が行われている。空を飛べるという利点があっても飛行時間が限られていては、応用に限界があるからだ。太陽光がひとつの“解”となるか。ドローン関係者のなかでも注目を集める挑戦となりそうだ。
photo by solarimpulse.com