飛行中、360度周囲を検知し、最大200m前方の障害物を避けることができるドローンレーダーシステムを開発したイスラエルのスタートアップ・アーブロボティクス(Arbe Robotics)が、今回、前方1㎞の距離にある障害物まで把握するレーダー技術を開発したという。
現在普及しているドローン製品のほとんどは、衝突を防止するための小型カメラやセンサーを搭載しているものの、その可視距離は50mほどに過ぎなかった。そのような理由から、配達用ドローンの商用化において、衝突の危険性が指摘されてきた。一方、アーブロボティクスのセンシング技術は、150m~1㎞前方のレンジを持ち、衝突を未然に防ぐことができるとされており、未来の物流を支える技術になるものとして期待を集めている。
アーブロボティクスの共同創業者コビ・マレンコ(Kobi Marenko)氏は、メディアの取材に対し「レーダーは、すべてを見ることができるという長所がある(中略)ステルス戦闘機であるF35を除いて、レーダー信号を反射していないものはない」と、自社が開発した技術に自信をのぞかせる。
「私たちのレーダーシステムは、毎秒50以上の障害物を検出することができ、これは1/2000秒で障害物を検出することを意味する。視野に依存するすべての飛行体の限界を超えることができ、配達用ドローンや政府の監視用ドローンの運用に安全性を加わえることができる」(マレンコ氏)
現在、世界各地では配達用ドローンの商用化に向けて、実証実験が盛んに行われはじめている。
米ネバダ州に拠点を構える新興ドローンメーカー・フラーティー(Flirtey)は、今年3月、米連邦航空局(FAA)の承認を得て、ミネラルウォーターや非常食などを、自律飛行で800mほど配送することに成功した。流通大手ウォルマートも昨年、配達用ドローンを屋外で飛ばしたり、倉庫在庫管理用に試験運行できるよう、連邦航空局に承認を要請した状態だ。
一方、ドイツ・DHL(ドイツポスト)は、2014年に独自開発した「パーセルコプター(Parcelcopter)」を利用し、ドイツ領イースト島に医療品を配送するテストに成功している。中国IT大手アリババグループも昨年、物流企業である上海YTOエクスプレスと提携。ドローンの配送テストに乗り出している。運営するショッピングポータルの顧客約450人に、生姜茶、医薬品、砂糖など、比較的重量が軽い商品を配送して話題を集めた。
ドローン関係者のなかでは、2020年に技術的に安全が担保された配達用ドローンが商用化され、2030年には、世界的にドローン宅配の売上高が約10兆円に達するとの試算もある。
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