“皮肉”を見破る機械翻訳システム登場...自閉症患者などの会話理解を促す

大澤法子2017年6月28日(水曜日)

 テクニオン・イスラエル工科大学の研究チームが、SNS上の皮肉表現を解釈する機械翻訳システム「サーカズム・サイン(Sarcasm SIGN)」を開発した。文面における皮肉表現を抽出・翻訳するシステムの開発としては今回が初めての取り組みだ。

 皮肉表現を非皮肉表現へと変換する機械翻訳技術を採用しており、強い皮肉的意味を持つ言葉を識別するよう訓練されている。研究チームは「#sarcasm」のタグが付いた3千件に及ぶツイートから成る言語データベースを編纂し、その後5名の人間の専門家が各ツイートを非皮肉表現へと変換した。

 皮肉的な意味合いを込めて人を賞賛する際に「awesome」という単語が使われることがある。しかしながら、自閉症やアスペルガー症候群の傾向がある人は「awesome」の意味を理解することが困難である。そこで「サーカズム・サイン」を用いることで、「awesome」を非皮肉表現である「terrible」へと変換し、自閉症やアスペルガー症候群の人の会話理解を促すことが可能となる。

 やはり、どれほど正確に皮肉ツイートを解釈可能かどうかが気になるところだ。人間の専門家が機械翻訳システムによる解釈精度について流暢性および妥当性の面から評価した結果、ほぼ意味的に正しい文を生成することが証明されている。

 現状では、メールなどの文面に含意される感情を自動的に識別・解析するシステムを開発することは難しいとされている。一方で、世間では話者の感情の宝庫である“絵文字”を翻訳する専門家の需要が高まりつつあり、昨年末、翻訳業務を受託する英企業が“絵文字”の翻訳家を募集開始した。

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大澤法子

記者:大澤法子


翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。人間同士のミスコミュニケーションに対するソリューションの担い手として、ロボット・VRなどがどのような役割を果たし得るかを中心に追及。

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