政府も積極活用…ドローン先進国シンガポールの関連法

ロボティア編集部2016年10月18日(火曜日)

 アジアの国のなかで、ドローンを活用して生産性や効率改善を促そうと注力する国がある。シンガポールだ。シンガポールでは、ドローン製品だけでなく、撮影した画像の処理および関連サービスなどの需要も高く、ハードウェアとソフトウェアの両面でビジネスチャンスが模索されている。

 シンガポール政府は2015年初め、ドローンの活用を拡大するため、運輸省(MoT)傘下にUAS(Unmanned Aerial System)委員会を設立した。UAS委員会は、食糧管理動物保護局(AVA)、国家環境庁(NEA)、土地管理局(SLA)、建築建設庁(BCA)など、様々な機関でドローンを活用する方案を企画・検討。現在、様々な政府業務にドローンが採用されている。

 例えば、配達用ドローンのテスト、蚊の退治、海洋における状況把握、都市計画と文化遺産の管理、災害対応、人命救助など、その導入例は非常に多岐にわたる。

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ドローンの購入と利用が比較的自由なシンガポールでは、そのように様々な機会が創出されている反面、公共の安全およびセキュリティへの脅威も高まっている。そのため、昨年6月には「公共の安全およびセキュリティに関する無人航空機法案(Unmanned Aircraft Public Safety and Security Bill)」が策定された。同法律は、既存の航空法などを改正して作られたもので、所管省庁はシンガポール民間航空局(CAAS)となる。

法案の主な内容としては以下の通りだ。

① 人偵察機を利用して、無機、生化学物質、放射性物質など禁止されている危険物を運搬した場合、最大10万シンガポールドルの罰金または、最大5年の懲役刑
② 許可なしにドローンを利用した物質の放出を禁止
③ 総重量7kg以上のドローンは使用許可が必要
④ 一定の地域に「保護区域」に指定。当該区域では、ドローンの飛行、またドローンを利用した撮影は許可が必要
⑤ 国が定めた祝日などに行われる特別な行事の際に、許可なくドローンを使用することは禁止
⑥ 飛行場、制限および危険区域の半径5㎞以内でドローンを利用するためには許可が必要
⑦ 民間航空局(CAAS)は、ドローンとドローン利用者の管理・監督のために、関連法令の制定権限を持つ。

 シンガポールでドローンを飛ばす場合には、CAASから許可を得なければならない。許可の種類は、大きくオペレーター許可(Operator Permit)と活動許可(Activity Permit)に区分される。前者はドローン操縦者が安全にドローンを飛ばす能力があるか、またドローンが安全に動作するかを審査するもので、有効期間は1年間となる。後者はドローン飛行の場所、時間、内容、公共の安全性などを審査するものとなる。

 重量が7kgを超えるドローンの場合、使用目的に関係なく、両方の許可を受けなければならない。またビジネス目的で使用する際には、重量にかかわらず両方の許可が必要となる。娯楽や研究目的で、かつ7kg以下であれば許可は必要ない。これらの許可なく違法にドローンを飛行させた場合は、最大で2万シンガポールドルの罰金や、1年の懲役刑となる。

 シンガポールのドローン輸入規模は、2015年には約5000万シンガポールドルだったが、その後も継続的に増加しているとのこと。なお、市場シェアの57.7%(2015年)は、中国産の機体が占めているという。

日本に似て人口密度の高いシンガポールも、ドローン関連産業の発展で法整備が進んでいる。

photo by Singapore Airlines