中国漁民が情報収集用の水中ドローン(無人機)を引き上げ、中国の情報当局に通報した。中国当局は他国が情報収集のために設置したものとみて調査に乗り出しており、その調査結果に関心が集まっている。
8月22日、中国中央TV(CCTV)とWSJなど海外メディアによると、地元の漁民が3年前に近海で網にかけた情報収集用ドローンを、最近になって中国の情報当局に引き渡したとされる。漁民は網にかかった物体が奇妙な物体であると思ったそうだが、よく見ると魚雷と似ているということから当局に申告したという。
中国の情報当局の初期の調査結果では、物体は水中撮影や衛星通信機器を備えた水中ドローンであると確認された。市販の商業用ドローンでは決してない。CCTVは「同ドローンは、他国の海軍が秘密裏に中国海域に設置したもの」とし、「中国の海軍艦隊活動の動向などを近距離で偵察し、情報を収集してきたものと思われる」と主張した。しかし、このドローンがどの国で製作されたかなどについては言及していない。
現在、中国は米国とともにグローバル・ドローン市場を牽引している。中国はきたる2023年までに無人偵察機を4万2000台生産するという目標を掲げ、ドローンの開発に拍車をかけている。また、中国は時速1万2240㎞の極超音速ドローンを開発し、米国の無人偵察機の技術を追撃している。無人偵察機「翔龍(シャンルン)」と大型ステルス無人攻撃機「利箭(リージェン)」も開発中である。
中国政府は技術流出を防ぐために、いくつかのドローン輸出禁止にしている。8月3日、ウォールストリート・ジャーナルは、中国政府がドローン、スーパーコンピュータなどを含むIT技術の輸出制限品目を増やすことにしたと報道した。同月中旬から、ドローンやスーパーコンピュータを中国から輸出するためには、一定の資格を得る必要がある。
中国がこれらの品目の輸出を制限した背景には、新技術の流出を防ぐ目的と、国家間のモメ事を事前に摘む意図がある。中国産ドローンは最近、日本、米国などで相次いで事故を起こしており、国際社会で問題となっている。今年1月、中国・DJI社製のドローンが、米国のホワイトハウスに墜落。4月には日本で、原発に反対する男性が首相官邸に放射性物質であるセシウムを搭載したドローンを飛ばし、墜落したが、この機体もDJI社製だった。
中国産ドローンが、軍事目的に使われたと疑いのある事例もある。インドと紛争中のパキスタンは、インドが飛ばしたとおぼしき、DJI社製の「スパイドローン」を撃墜、写真を公開している。
中国はすでにドローン大国に浮上した。DIJ社は売上高ベースでグローバルシェア1位を獲得している。ちなみに、今回の輸出制限措置による中国ドローンメーカーの売上高への影響は、微々たるものという見通しだ。今回、輸出制限品目とされたのは、1時間以上の飛行が可能な製品。商業用ドローンの輸出は制限品目から除外された。
一方、米国は次世代ドローンの開発に注力し、中国の追撃をかわす意向だ。米国防総省は、今年5月の年次報告書で、「中国が無人機の開発に拍車をかけており、将来の米国無人機の能力を超える可能性がある」と憂慮を示したことからもそのことがうかがえる。