イギリス王立海軍(英海軍)は8月28日、次世代の潜水艦システムのコンセプトを発表。イギリスの研究者や若いエンジニアが参加したプロジェクトで、すぐの実用化を目指すものではなく「50年後」の姿を予測したもの。英海軍は、このコンセプトを元に今後の潜水艦運用のあり方のヒントにするという。英海軍の担当者はBBCの取材に対し、「このアイデアのうち1割でも現実化できれば、軍事的に世界で優位に立てるだろう」と話した。
潜水艦のコンセプトはいくつかに分かれるが、どれも斬新なアイデアだ。“司令塔”の役割を担う母船「Nautilus 100(ノーチラス100)」は水深1000mまで潜ることができ、数ヶ月間海中に留まったまま活動できるという。アクリル製材でできた有人の潜水艦で、20人の乗船が可能。この母船をハブとし、様々な自律型無人潜水機(UUV)に指示を与えるというわけだ。
一方、母船に付随するUUVも驚くようなアイデアが詰まっている。まず1つ目は「ウナギ型UUV」だ。母船もしくは水中基地から発射され,ウナギのような動きで海中を遊泳する。数百キロ連続で水中にとどまることができ、複数の機体が水中で交信して偵察・防諜を行い、水中通信ネットワーク網を構築することができるという。
さらに、このウナギ型UUVからは「マイクロドローン」が発射される。この小さい自立型の機体は敵の船や潜水艦を追跡し、接近することが可能。このマイクロドローンのすごいところは行動が完了したら、“自然消滅”するところだ。機体は塩水に溶ける特殊なポリマーからできており、一定期間を過ぎると溶けてなくなってしまうのだ(ただし英海軍は「現時点で実現可能な技術ではない」としている)。
そして最後は「自律型魚雷」だ。母船から発射されるこの魚雷はいわばトビウオ型とも言うべきか、水中に潜ったり、ジャンプして空中に顔を出したりして、水面に沿って潜水(飛行)する。敵のレーダーは、こうした動きを捉えることが極めて困難になる。もし敵に発見されても、水中深くに潜ってしまうので、いずれにせよ敵から発見される可能性はゼロに近いという。潜水時は内蔵電池、空中ではマイクロタービンを動力とする。
英海軍の担当者はBBCの取材に対し、「我々は世界で最も高度な技術を持つ軍隊の1つである。それはこうした独創的で挑戦的なアイデアを生み出すことができるからだ」と述べている。かつて世界の海を制覇した英海軍は、将来的、再び海洋国家として復活するかもしれない。
All Photo by Royal Navy