オレオレ詐欺に悪用!?「人工知能でボイスフィッシング犯罪増加」米紙警告

ロボティア編集部2016年11月7日(月曜日)

 ニューヨーク・タイムズは10月24日に配信した記事で、人工知能-AI技術が発達することで、オレオレ詐欺などボイスフィッシング犯罪に悪用される可能性が高まっていると警告した。

 同紙はアルファ碁を開発したGoogleの子会社ディープマインドが最近、「どのような人間の声も真似することができ、(また)既存のどのシステムよりもはるかに自然な音声を提供することができる音声合成システムの開発に成功した」とした。このようなシステムが犯罪に悪用されれば、全世界的にボイスフィッシングが拡散する可能性がある。

 米捜査機関のITアドバイザーで、「未来の犯罪」の著者であるマーク・グッドマン(mark goodman)氏は、「サイバー犯罪の自動化が進んでおり、その数が爆発的に増加している」と警告。また、ナショナルインテリジェンスのジェームズ・クラッパー(james clapper)氏は、今年初めに発表されたコンピュータセキュリティに関する年次報告書で、「人工知能技術の急速な発達で、インターネットの脆弱性はさらに高まっている」と強調している。

 コンピュータ犯罪は年々、確実に巧妙になっている。例えば、「ブラックシェード(Blackshades)」と呼ばれる攻撃プログラムの存在。これは特別な知識がなくとも、他人のコンピュータに侵入し、動画を作動させたり、音楽を流して使用できないようにすることができる。プログラムを送りつけた主はその後、原状復帰の対価として「身代金」を要求する。このプログラムを開発した人物は昨年、米国で有罪判決を受けたが、プログラムは今でもネットの地下世界で流通していると言われている。

 現実的にはまだ、人間の方が人工知能より犯罪に手を染める可能性が高いかもしれない。というのも、ボイスフィッシングに加担する人々は低コストで雇われているからだ。そのコストに比べれば、莫大な開発費用がかかる人工知能の開発は現実的ではない。

 それでも、最新テクノロジーはいつでも犯罪に悪用されてきたという点が懸念される。犯罪を犯す人々は技術の進歩に敏感だ。コンピュータ犯罪の専門家たちが案じているのは、人工知能技術の発達で、さらに犯罪手法が高度化されること。ニューヨーク・タイムズは、「このようなソフトウェアが犯罪に悪用される時代が目の前に迫ってきた」と警告している。

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