米自動車最大手GMが「AI乗用車」に本格参入…IBMワトソン活用

ロボティア編集部2016年11月8日(火曜日)

 米自動車メーカー・ゼネラルモーターズ(以下、GM)は、人工知能=AIとの共生を宣言した。10月25日に米メディアが詳細を報じた。今回、米最大の自動車メーカーが製品性能を強化するために取り入れとしたのは、IBMの人工知能「ワトソン」だ。 2017年には、同人工知能を採用した「OnStar Go」を披露するとしている。

 GMは今後、人工知能ワトソンの助けを借りて、乗用車の機能を大幅に拡張。サービスの裾野を広げていく計画だ。例えば、運転者の好みや消費履歴、位置、天気予報などを収集し、リアルタイムでドリンクやガソリンスタンド、音楽などを推薦する。また、運転を中断せずとも、コーヒーショップ、量販店、ガソリンスタンドの位置を検索・店頭までの道も案内する。

 それらの試みは、いまや汎用品に転落しつつある自動車という製品を、「オープンプラットフォーム」として新たに強化していく可能性を秘める。実際、GMはエクソンモービル、マスターカード、パークペディア(Parkopedia、駐車場関連企業)、アイハートメディア(iHeartMedia、音楽提供企業)などのパートナーともに、自動車の新しい可能性を模索する構えだ。

 なお、人工知能・ワトソンはすでに様々な産業で活躍している。その最たる例が、医療現場だ。ワトソンの最大の強みはビッグデータの処理能力。2億ページ分の医療情報や臨床試験事例をわずか3秒で検索すると言われている。加えて、オンライン上にある論文データなども用いて、患者の最適な治療方法、薬の処方について医師に助言する。

 現在、米テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターでは、ワトソンを使ったヘルスケアサービスが提供されている。その癌診断の精度は、大腸がんが98%、膀胱がん91%、膵臓癌94%、子宮頸がん100%と、専門医よりも優れているという。

 ワトソンは、インドの医療現場でも力を発揮。バンガロールのマニパル総合病院では、ワトソンを活用したがん診断サービス「ワトソンオンコロジー(watoson Oncology)」が運営されている。この病院の医師は、同システムに接続されたタブレットPCを活用し、患者の状態を分析。患者にカスタマイズされた治療法を提示している。誤診率も大きく減ったという評価だ。

 ワトソンの人工知能は、医療以外にもすでに、保険、自動車など30以上の産業にサービスを提供されているそうだ。アメリカの軍人専門保険会社はワトソンを活用して、除隊軍人を相手に除隊後のカウンセリングサービスを提供している。また銀行では、金融商品を選んでくれる役割を果たしたり、保険会社では医師の診断が適正かどうか、また保険料の支払い審査などに活躍中だ。

 今後、ワトソンをはじめとする人工知能が“生産性”を引き上げるとされる領域は、さらに多岐にわたると見られている。IBM側は、10年後のAI市場規模が200兆円になると予想している。

photo by GM