正常カードの認証拒否を減らせるか…マスターカードが人工知能導入へ

ロボティア編集部2016年12月29日(木曜日)

 マスターカード(MasterCard)がクレジットカードの承認に人工知能(AI)技術を導入する。通常のクレジットカードの取引を、詐欺取引と認識してしまい、承認を遮断してしまうのを防ぐ目的だ。人工知能システムの名称は「ディシジョン・インテリジェンス(Decision Intelligence)」となる。

 この人工知能は、顧客が正常に使用するカード取引の承認拒否を減少させることができる。ディシジョン・インテリジェンスは、マスターカードのグローバルネットワークに人工知能技術を融合させた最初の事例となる。現在の取引の承認システムは、事前に定義されたルールに基づいて取引リスクを測定する。一方、ディシジョン・インテリジェンスは、顧客の個別の取引を評価し、スコアリング・学習するという新しいアプローチをとる。また各取引を分析し、必要な情報を算出し、それをベースに発行社が次の取引を通常かどうかを判断する。

 マスターカードのリスク管理部門アジャイ・バーラ(Ajay Bhalla)代表は、「同サービスは、消費者が通常の取引で承認拒否にあう問題を解決できるようにするためのもの(中略)マスターカードのグローバルネットワークに人工知能技術を適用し、金融機関と加盟店がカード承認率を高め、より強化された消費者体験を提供できるようにする」と導入の経緯を説明している。

 ディシジョン・インテリジェンスは、顧客が過去にどのような消費パターンがあるか分析し、通常・異常な消費形態を判別する。活用するデータは、顧客セグメンテーション、リスクプロファイル、取引場所、加盟店、決済デバイス、支払い時間と取引の種類など膨大だ。

 カード業界は、取引承認率と不正取引防止のバランスを維持しながら、虚偽の売上を防止するための様々な努力を傾けてきた。

 ジャベリンストラテジー&リサーチ(Javelin Strategy&Research)のアル・パスクアル(Al Pascual)上級副社長は、「米国の場合、間違って拒否されるカード取引の規模が、クレジットカード不正使用に起因する損失よりも13倍以上大きい(中略)マシンラーニング技術を活用した不正取引検知システムは、肯定的な消費者の経験を提供しながら、不正取引を最小限にする画期的な案である」と述べている。ディシジョン・インテリジェンスは今後、全世界のすべてのマスターカードのブランドや商品に適用される。

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