中国最大の通信会社・チャイナモバイル(中国移動/China Mobile)」が、人工知能を使った「スマートロボットサービス」を、売り場とシステム運営に導入し注目を集めている。中国のモバイル普及率は高く、いまやモバイルブロードバンドやビッグデータ、クラウドなど、人工知能技術があらゆる分野で普及しつつある。
国営通信社である中国新華社によると、チャイナモバイルは傘下のオンラインサービス企業およびチャイナモバイル通信研究院と協力し、独自のスマートロボットサービス「エバ(移娃:EVA)」を、自社サービスシステムに適用し始めた。こちらはサービス店などで苦情や相談などを処理できる人工知能ロボットである。
エバはチャイナモバイルの利用者向けサービスホットライン「10086」をサポートしており、料金確認やデータ購入、料金納付などの機能がある。そもそも、ホットライン10086とは「10086」にショートメッセージを送り問い合わせると、自動回答を得られる仕組みとなっており、2008年末より人工知能による応答を開始した。関係者によると「当初の意図は、海外のMSNメッセンジャーや上海万博での経験を参考に、利用者により便利な回答サービスを行うというものだった」という。
一方で8.8億人のユーザーを持つチャイナモバイルにとって、従来の運営モデルはコストが非常に高く、管理効率も低かったと分析されている。チャイナモバイルがこれらの課題を解決すべく導入したのが、まさに人工知能技術アプリケーション基盤のサービス「エバ」である。
エバは「自然言語会話サービス」が可能。 WeChat(微信)をはじめ、インターネットチャンネルやモバイル文字サービス、オンラインサービスなど、従来のアプリケーションにも適用でき、使用者のための相談サービスも立ち上げられている。ユーザーの不満を都度処理し、情報を分析調査するなどさまざまな苦情や仕事を処理する「24時間体制」のオンラインサービスが可能になった。今後、徐々にサービスを向上させる狙いだ。
ロボットの学習能力に基づいて、エバは様々な状況で活用することができる。 例えば、質問を聞き返したり、事実を確認する形で顧客の意図を正確に理解する。言語速度など様々な情報をもとに、顧客の感情と状況を診断・分析することができる。さらには料金の支払いもできるだけでなく、翻訳も可能だ。日常会話をはじめ、天気や地理などを中国語だけでなく、英語などいろいろな言語に翻訳することができる。
また、企業を対象にしたワンストップ・ソリューションも提供している。 オンラインで企業から要求を受ければ、即座にロボットが商品のプラットフォームとしての役割を果たし、知識財産権保護などもサポートする。
チャイナモバイルは、中国31の省に五万人を超えるサービス拠点を持っており、これまで10年あまり技術開発だけでなく、運営サービスそのものにも研究を費やしてきた。エバはすでにチャイナモバイルのすべてのサービスに適用されており、全体のネットワークサービス拠点や、サービス店の利用者が月平均1000万人を超えている。一方でエバの識別能力も90%を超えているという。
チャイナモバイルが提供しているデータによると、2016年にエバが適用され始めて以来、1億1000万元(約18億6125万円)を超える人件費削減に成功したそうだ。チャイナモバイル側は、原価を下げて効率を高め、さらなる利益拡大を促す新たなサービスとして、人工知能を活用する「スマートサービス産業」に自信を見せている。
photo by 陈少举