今年1月、米国では人工知能を搭載したチャットロボット・Googleホーム2台に対話させ、互いに意見を交換させる実験が行われた。両マシンは、数日間にわたり無数のテーマについて議論。互いの主張をぶつけあった。
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そんなコンピューター同士の論争が注目を浴びるなか、国際学術誌・プロスワン(PLoS ONE)が、インターネット百科事典・ウィキペディア(Wikipedia)上で繰り広げられている、自動編集ボットの“編集戦争”について研究結果を紹介した。
ウィキペディアでは、項目エラーの修正、リンク追加など、品質改善を行う編集ロボットが多数活動しているのだが、研究結果によれば、それらロボットが他のロボットが編集した内容を覆し、さらに修正を加えるという事態が続いているという。
例えば、2009年から2010年までの一年間で、エックスキュボット(Xqbot)という自動編集ロボットは、ダークネスボット(Darknessbot)が編集した内容を2000回にわたり修正。逆にダークネスボットは、エックスキュボットが編集した内容を、1700回にわたり修正したという。内容としては、「アレクサンドロス1世(Alexander of Greece)」から、サッカーチーム「アストン・ヴィラFC(Aston Villa football club)」まで多岐にわたるという。
人々が論争を繰り広げたり、文献を修正する作業には、ある程度、時間的な限界がある。まず体力がもたないし、論争を繰り広げることにほどなく飽きることが大半だからだ。ただ、編集作業を担うボットやソフトウェアプラグラムは、疲れることも、飽きることもなく、24時間にわたり“論争”を続けている。
そのことは、人間にとっても決して無関係ではないはずだ。ロボットやコンピューターが、設計者が予想だにしなかった形で編集作業を際限なく続けることで、人間に提供される情報の質が変化していく可能性があるからだ。ものごとの意味や真実を定義する作業が自動化、つまり”知の自動化”が起こるなか、人は何をものさしとして世界を捉えるようになるのか。そこに答えを見出す作業は、人工知能時代の到来とともに人間の課題のひとつとなるやもしれない。
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