現在、リシンク・ロボティクス社が開発するバクスターなど、人間と協業するタイプの新たな産業用ロボット「コ・ロボット」が徐々に普及を迎えている。そこで、ひとつの焦点となっているのが、「いかにロボットの作業ミスを減らせるか」という点だ。
MITとボストン大学は、異常を検知する人間の脳波を直接伝えることで、ロボットのミスを減らそうという研究を試みている。まるで人間とロボットがテレパシーで交信するかのようにコミュニケーションを図る実験映像は、世界的に話題となった。
【関連記事】>>>人間と機械がテレパシーで作業!? MITとボストン大学が脳波でロボットを制御するシステム開発中
一方、米ブラウン大学にあるステファニー・テレックス氏のラボで研究する科学者たちは、異なった角度からアプローチを続けている。それは、ロボットに「ソーシャルフィードバック」のプロセスを理解する技術を教えるというものだ。人間は分からないことがあると周囲の人間に質問したりと、社会的な環境を利用し自分の能力を向上させていく。その能力を、ロボットにも適用しようという訳だ。
米ブラウン大学が公表している研究動画では、人間とロボットがジェスチャーや会話をしながら作業を改善していくシーンが記録されている。ロボットは理解できない状況に陥ると、混乱状況を克服するため、人間に質問したり、ジェスチャーを読み取ろうとする。
デビッド・ホイットニー(David Whitney)、エリック・ローゼン(Eric Rosen)氏ら研究者たちは、研究成果を5月にシンガポールで開催される「ICRA 2017」で発表する予定だ。論文のタイトルは「ソーシャルフィードバックを通じた物体取得時のミス低減(Reducing Errors in Object-Fetching Interactions through Social Feedback)」となる。
研究チームは、人間が要求するタスクを正確かつ迅速に理解するための「物体取得領域(item-fetching domain)」の数学的なフレームを定義。ロボットの混乱過程を克服することができる「POMDP(Partially Observable Markov Decision Process)」モデルをつくった。同モデルを適用すれば、ロボットが人間にいつ適切な質問をすべきか判断できるようになるので、物体を正確かつ高速に取得できるという。研究チームは、16人の参加者を対象に実験を行った結果、同モデルは基本的なモデルよりも速度が25%以上速く、精度は2.1%改善されたとしている。
photo by youtube