「第4次産業革命」で覇権を狙うインテル…開発&買収で全方位展開

ロボティア編集部2017年4月21日(金曜日)

 今や日本でも成長戦略の柱となっている「第4次産業革命」だが、その牽引役として人工知能(AI)への投資が加速している。大手グローバル企業群が総力をあげて開発に取り組んでいるなか、インテルの動きに注目が集まる。

 人工知能の開発はそう容易いことではない。なぜなら、単にIT機器の処理速度を高めてデータ保存量を増やすだけではだめで、機器の処理性能はもちろん、これをIoT機器に適用するための製品デザイン、さらには周りの環境を分析するためのセンサーも必要。その上ビックデータを用いたクラウドとの接続が必要であり、多種多様な機器間の連結のための高速ネットワーク技術も欠かせない。

 インテルはそれらソリューションを同時に開発・提供することができる唯一無二の企業である。インテルのプロセッサの認知度は高く、加えて空間と事物の動きを分析しながらデータ化する「リアルセンス(Real sense)」というセンシング技術も保有した。また、インテルは各種端末機器とIoT、クラウドなどを連結する5G(5世代移動通信)の開発にも携わってきた。

 インテルは人工知能技術を開発する一方で、企業買収による事業基盤拡大にも積極的だ。2015年10月には、人工知能企業「サフロン(saffron)」を買収。翌年9月には周辺環境を認知、分析する画像認識プロセッサを開発する「Movidius(モビディアス)」も買収した。その他にも、AIスタートアップ「Nervana Systems(ナーバナ・システムズ、以下ナーバナ)」を買収した。

 ナーバナについては、同社主要人物をインテルのAI開発チームのリーダーに起用しており、年内には人工知能に特化した新型プロセッサ「レイククレスト(LakeCrest)」を公開する予定だ。さらに、それらを改良した「ナイトクレスト(Knight Crest)」も開発中だという。インテルは今後さらにAI分野に注力し、2020年までにマシンラーニングの時間を100分の1に短縮するという目標を掲げている。

 このほかにも、関連ソフトウェアおよび開発者サポートに力を注いでいる。インテルが発足させた、「インテルナーバナAIアカデミー(IntelNervana AI Academy)」では、AI関連技術開発に向けた開発者用ツールをはじめとする様々なソフトウェアを支援し、各種教育プログラムも提供する。

 そして、そのような多種多様なハードウェアとソフトウェアを連結するための5G通信技術の標準を定める取り組みにも乗り出している。インテルは今年1月、自社で開発した世界初のグローバル5Gモデムを公開しており、3月に開かれた「モバイルワールドコングレス2017(MobileWorld Congress:MWC 2017)」では、5G関連技術開発に向けたモバイル端末テストプラットフォーム(Mobile Trial Platform:MTP)の第3世代モデルを発表したことでも話題となった。

 クラウドとの円滑な連動が求められる自動走行車およびIoT機器の人工知能システムにとっては、5G技術が重要な要素とされている。関係者によると、5G規格の第1段階が正式に承認されるのは、2018年5月以降になる見込みだという。

photo by Intel in Deutschland