2度目の事故でテスラ「オートパイロット」が再び物議...マスクCEOは誤作動を否定

ロボティア編集部2017年7月20日(木曜日)

 米電気自動車メーカー・テスラの半自動走行システム「オートパイロット(Autopilot)」の安定性について、改めて物議が巻き起こっている。

 海外各メディアは、米ミネソタ州でテスラ車を運転していた50代のドライバーが、自律走行モード中に事故を起こし、警察に通報したというニュースを伝えた。事件が発覚したのは16日だが、17日には同事故と関連しテスラの株価が4.4%下落した。

 テスラは声明を発表し、ドライバーとやりとりしたメールの内容を公開するなど、議論の沈静化に乗り出したが、株価下落を防ぐことはできなかった。最終的に、テスラの株価は前日より2.5%下げた319.57ドルで取引を終えた。

 ミネソタ州カンディヨーハイ郡保安事務所は、16日の声明で「2016年式テスラ車を運転していたドライバーがオートパイロットモードにすると、突然、車が速度を上げ、車道を脱し湿地に墜落した」と事故の経緯を明らかにした。車両が転覆し、運転者を含む5人が軽傷を負ったという。

 テスラは声明で「事故の事実を認知しており、地元警察の捜査に積極的に協力する」としながらも、「事故当時、自律走行機能が作動していたか否かはまだ確認されていない」と一線を引いた。

 またテスラは「オートパイロットは、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)のテストの結果、他のシステムより事故率を40%減少させることが分かった」とし「オートパイロットの誤動作が事故原因とは断定する理由がない」と述べている。

 テスラのイーロン・マスクCEOも18日、ドライバーや保安当局の主張を覆す内容が盛り込まれた電子メールを、自分のTwitterに公開。事件の沈静化に乗り出している。事故運転者は、テスラ側に送ったメールで、「テスラの自律走行システムを責めるつもりはなかった」「オートパイロットが動作するかに関係なく、自分で車をコントロールする必要性をあることを知った」とした。これに対してマスクCEOは「私たちは事故車両の運転者と対話しており、彼はテスラに感謝している」とした。

 テスラのオートパイロット絡みの事故は、今回が2度目だ。昨年5月、米フロリダ州では自律走行モードで高速道路を走っていたモデルSが、対面から左折したセミトラックの白色のボディと明るい空を区別できず、死亡事故が発生した。当時、NHTSAの調査結果では、自律走行システムに特筆すべき欠陥は発見されていないが、技術の補完が必要だという指摘が提起されている。

 テスラは、オートパイロットは運転者を補助するシステムであって、完全な自動走行システムではないという立場だ。オートパイロットシステムを作動させた状態でも、運転者がハンドルを握り、走行中に起こるアクシデントや変化を判断しなければならないと再三強調してきた。つまり事故については、ドライバー側の認識不足が原因と、暗に指摘してきたことになる。

 ただテスラに限らず、自動運転のニュースが毎日のように報じられる中、ドライバーが「自律走行」と「半自律走行」の意味を取り違えることは充分にあり得る話だ。実際、各国の資料を見ても、その技術的な違いは非常にわかりづらいし、専門家をのぞいて定義を正確に理解している人が多いとは思えない。現状では、責任回避は死亡事故につながる可能性を否定できないため、メーカーや規制当局がアナウンスを徹底する必要があるだろう。また、日本のモータージャーナリストからは次のような指摘もある。

「電気自動車や自動走行車が注目を浴び、テスラは自動車メーカーとして日本でも認知度が高い。しかしモータージャーナリストたちの一部は、テスラが他の自動車メーカーと比べて、自動車を真面目につくる気があるのかと懐疑の目を向けています。例えば、テスラは自動車そのものに劣らず、排出権取引で多くの利益を得ている。こういう言い方が正しいかわかりませんが、“金融屋”的な側面が強いんです。今後、テスラの動きを見ていけば、彼らが自動車についてどのような思いを抱いているか、おのずと明らかになってくるでしょう」

 一方、海外メディアは、テスラが昨年の事故後に360度の視界を確保するためのカメラとセンサーを備えた新しい車種を披露したが、今回の事故で改めて議論が燃え上がり影響は少なくないなどと予想している。

Photo by Steve Jurvetson (via wikicommons)