人間が作業をこなす過程を“視覚”で学ぶ人工知能が紹介され話題となっている。
米国マサチューセッツ州工科大学(MIT)は2日、大学のオンラインマガジンを通じて、メリーランド大学の自動化・ロボット工学・認知工学研究所が新たに開発したマシンラーニングアルゴリズムを紹介した。マシンラーニング(機械学習)とは、人工知能が新しい情報を学習・活用できるようにする技術を指す。
開発を率いた同研究所所属の大学院生は「各分野の専門家が、人工知能ロボットの前で作業を直接見せれば、人工知能はその進行手順をほぼ自ら学習することができる」と述べている。
現在、生産ラインなどで活用されているロボットに新しい作業手順を入力するためには、時間をかけて再プログラミングする必要がある。しかし、今回開発された学習アルゴリズムを利用すると、そこにかかる時間を大幅に減らすことができると研究チームは説明している。
研究チームは、セントルイス市で開催された学術会議で、ロボットが人間のバーテンダーの作業を模倣して、同じカクテルを作るデモンストレーションを披露した。ロボットは、材料が使用される順序やその量を正確に学習してカクテルを作りだした。
研究チームは、専門家のテストだけでなく、インターネット上にある動画から人工知能に新しい技術を学習させる研究も進めている。オーストラリアの研究施設NICTAと協力して行われた同研究内容を盛り込んだ論文が、最近発表されている。
論文によると、研究チームは動画共有サイトYouTubeにアップロードされた料理の動画を通じて人工知能に学習させた。ここには、大きく分けてふたつの認識システムが採用された。ひとつは、映像に出てくる複数の事物を認識するシステム、もうひとつは人が物を握る方法を分析するシステムである。
このふたつのシステムを基本にすれば、数千本の動画を視聴した人工知能がさまざまなタスクを行えるようになるという。研究チームによると、数千本の動画を視聴するのは時間の浪費のように感じるが、様々なタスクをすべて取り扱うことができる完全なシステムを開発することよりも、はるかに効率的なのだそうだ。またこの人工知能は、既存の人工知能と異なり、過去に接したことのない情報が与えられた際にも適切に対応することができるという利点がある。
同人工知能のソフトウェア開発には、マシンラーニングの分野で広く使われているCNN(convolutional neural networks、スパイラルニューラルネットワーク)アルゴリズムが使用された。スパイラルニューラルネットワークアルゴリズムは、膨大なデータの中から一定のパターンを把握することができる「人工ニューラルネットワーク」(artificial neural network)の一種である。
現在、研究者たちは複数の電子機器・自動車企業とコンタクトを取っていることを明らかにした。これらの企業は、産業用ロボットの再プログラミングの時間を短縮させることに大きな関心を持っている企業である。
研究関係者は「ほとんどの企業では、6週間、あるいはそれ以上の期間を消費しながら、ロボットの再プログラミング作業を行っている。今回の研究は、その時間を半分にまで減らすという意図がある」と伝えた。
photo by UMD Right now