5月上旬、中国科学技術情報研究院、チャイナフォーチューンメディアグループ(中国财富传媒集团公司)、コンサルティング企業・CIECC(中国国際工程咨询公司戦略研究院)が共同開催したフォーラム「人工知能の応用と未来発展推移」では、中国国内の人工知能(AI)産業が「爆発的成長期」に突入し、政府の政策支援などに支えられたロボット産業への投資もまた増加していくだろうという分析が発表された。特にロボット分野は次世代の投資分野における最注目株とされ、市場規模が1兆元(17兆4000億円)にまで膨らむと指摘された。
CIECCの区域企画部幹部・于明氏によれば、近年の中国AI産業は「珠江デルタ」、「長江デルタ」、「北京・天津・河北省」「東北地方」「中部地方」「西部地方」など、6つの地域に集中しているという。各地域ではAI産業の奨励政策が展開されており、百億元規模の産業ファンド、千億元規模の産業団地が相次いで誕生している。また広東省でも、人工知能関連の政策が相次いで実現しており、人材・地域・政策面で積極的な支援がなされている。
そのような地域的支援のもと、中国のAI産業は急速に発展しているという。各データによれば、2017年の国内AI産業への投資額は史上最高の10.3億ドルを記録した。業界内では、2016年から2020年の間に、AI関連の市場規模が年平均50%ずつ成長し、2020年には世界市場の約7.6%を占めると予測されている。
于明氏はロボット産業の将来性についても言及。推定では、中国のロボット産業資本は1000億元以上を必要とする状況であり、そのなかで産業用ロボットに約500億元、サービスロボットには約400億元がかかると説明した。加えて今後、中国のロボット産業のレベルが高くなれば、資金需要もさらに大きくなると予想した。
于明氏はまた、中国のサービスロボット企業は約4000社で、そのうち80%の企業が金融投資を必要とする中小企業だと分析を補足。設立初期に需要を取り込み、価値ある製品をリリースできれば、その企業価値が大きく上昇するだろうとしている。
CIECCの別の関係者は、医療業界もAIの重要なビジネス領域になると指摘。昨年、中国で診療を受けた人口は80億人に達するが、1000人あたり1.5人しか医師が配置されていない厳しい現状があるという。それ故に、医療環境のおけるAI製品・サービス成功の可能性は高いという説明だ。
一方、中国のAI産業の現在地についてネガティブな意見もある。英オックスフォード大学は今年3月、レポート「Deciphering Chinas AI-Dream」(中国のAIの夢を読み解く)を公開。米国と中国の「AI潜在指数」(以下、AIPI)を比較し、中国の人工知能(AI)の力量は、米国の半分であると評価した。AIPIは、「ハードウェア」、「データ」、「アルゴリズム」「商業化」の4領域から、国家のAIに関する能力を総合的に測定した指標となる。レポートは、それら4領域のうち「データ」のみ中国が優位な状況にあり、残りの3つでは、米国に大きく劣っているとした。AIPI指数では、中国17点、米国33点と結論されている。
産業の爆発的成長の中で技術・人材・エコシステムを確立し、名実ともに「AI産業の覇者」になれるのか。中国の今後に注目したい。