不動産仲介業を代替する人工知能(AI)ロボットが登場し話題となっている。AIロボットの名称は「レックス」(REX)。潜在的な住宅購入希望者を探し出し、カスタマイズされた住宅情報を提供する。開発を進める企業はレックス・リアルエステート・エクスチェンジだ。
レックスはまず、インターネット上で不動産や住宅を探している“潜在的購入者”と、彼らの趣向をデータとして収集する。主にフェイスブック、インスタグラム、スナップチャットなどSNSメディアが情報収集の舞台となり、集めた情報をもとに顧客に不動産商品をマッチングさせていく。
レックスには、潜在的購入者の質問に答えるアシスタント機能もある。レックスの開発者担当者によれば、住宅に関して買い手が持つ主要な質問は75個に分類できるという。数百~数千パターンの質問は、それら75個の質問を言い換えたに過ぎないそうだ。
レックスを利用すれば、家を販売する家主・オーナーたちにも利益がある。通常、不動産業者には6%の販売手数料を支払うが、レックスを通じて販売が決定した場合は2%だけを支払えばよい。
NAR(全米不動産仲介協会)が発表した2016年の統計によると、米国内の89%の住宅が不動産業者(仲介業者)を通じて取引されていた。一方、間に仲介業者を置かず住宅所有者が直接取引するケースは8%のみだ。しかし、この8%には高級住宅が多く含まれており、レックスはその割合を増やしていくことを目標にするとしている。なおレックスには、高級住宅を販売したいオーナーの情報を収集・接近し、低い手数料で購入者を探すというサービス面もある。現在、レックスの市場はサンディエゴに始まり、ニューヨーク、LAなど徐々に拡大しているという。
一方、人間に代わって賃貸住宅を案内してくれるロボットも登場した。開発したのは、サンフランシスコの賃貸管理会社ゼンプレイス(Zenplace)だ。同社は迅速に顧客を案内するためロボットを開発。最終的に、賃貸住宅の空室期間を減らすことを目標としている。
ロボットを導入したことで、賃貸希望者は仲介事業者やオーナーのスケジュールにとらわれず、いつでも家を案内してもらえるようになった。利用方法は簡単。物件に到着するとモバイルアプリからドアを開くコードを受けとり、家に入るとロボットが出迎えてくれる。ロボットの顔はiPadのようなスクリーン画面でできており、そこには人間の仲介スタッフの顔が浮かぶ。
ロボットは、住宅の詳細な説明、周辺地域と賃貸住宅の情報などをリアルタイムで提供してくれる。賃貸希望者が仮に気にいれば、その場で賃貸契約書の作成まで可能となっている。ジェンプレイスは、ロボットを開発することで、自社が拠点を構えるサンフランシスコ以外の米国のどこからでも、賃貸仲介手数料が得ることができるビジネスモデルを構築できたとしている。
AIやロボットによる自動化が進めば、借り手・貸し手にもたらされる時間的・コスト的メリットは少なくない。人間の仲介業者が今後も利益を出していくためには、競合他社だけでなく、テクノロジーに対して差別化されたサービスが必要となっていくかもしれない。
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Photo by REX Real Estate HP