韓国NAVERが米ゼロックスの欧州AI研究拠点を買収...先端技術研究に拍車

河鐘基2017年6月29日(木曜日)

 韓国IT企業最大手・NAVERが、米ゼロックスからフランス・グルノーブルに拠点を構える「ゼロックス・リサーチセンター・ヨーロッパ(以下、XRCE)」を買収。人工知能など、未来技術分野の研究を拡大すると6月27日に明かした。すでに社員協議会(Works Council、Comitéd'entreprise)が買収契約を最終的に承認しており、今年の第3四半期までには取引が完了する見通しだ。

 1993年に設立されたXRCEは、先端技術を取り扱う研究センター。主に、マシンラーニング、コンピュータビジョン、自然言語処理などを研究している。買収に関して、NAVERのソン・チャンヒョンCTOは次のようにコメントを残した。

「XRCEは、世界的に注目される研究者たちが集まるゼロックスの主要研究所のひとつ。NAVERの未来技術研究と同じ方向性を持っており、相乗効果が生まれることに大きく期待している。(中略)コンピュータビジョン、マシンラーニング、自然言語処理など、XRCEのAI研究成果が、NAVER Labsが注力するAIおよびディープラーニング、3Dマッピング、ロボットなど『生活環境知能』の研究に加わり、グローバルな舞台でより大きな成果を出すだろう」

 一方、ゼロックスCTOのスティーブ・フーバー(Steve Hoover)氏は、「XRCEで行われているほとんどの研究は、ゼロックスのサービス事業をサポートすることに集中してきたが、サービス事業を別会社として独立させたためゼロックスの戦略に従わない」と言及している。加えて「ゼロックスは今回の決定を通じて、今後進もうとする事業分野に最適化されたR&Dを続けるだろう」とコメントを残した。

 NAVERは、韓国国内の検索サービスを運営する過程で築いてきたノウハウをもとに、「LINE」や「SNOW」などのサービスを展開。最近では、技術研究専門の子会社・NAVER Labsを中心に、人工知能、自律走行、マシンラーニング、コンピュータビジョンなど先端技術の研究に拍車をかけている。

 今後、NAVERとゼロックスは、ゼロックスが保有するXRCEの知的財産権を使用するためのライセンス契約を締結する予定。XRCEに所属していた80人の研究者は、NAVER Labsに籍を移し研究を続けていくことになる。

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photo by XRCE ウェブサイト

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。