サムスンがAIプラットフォーム企業VIV Labs買収...競争力強化へ

ロボティア編集部2016年10月9日(日曜日)

 サムスン電子がアメリカ・シリコンバレーに拠点を構える人工知能(AI)プラットフォーム開発企業ヴィブ・ラボ(VIV Labs)を買収すると6日、明らかにした。ヴィブ・ラボは、Appleの人工知能アシスタント・シリ(Siri)を開発した人物たちが、Appleを離れ、新たに開発するために2012年に設立した企業だ。

 サムスン電子がヴィブ・ラボを買収するのは、グローバルIT企業間の人工知能技術競争で主導権を失わないためと見られている。また、すべての機器とサービスがひとつに接続される人工知能ベースのオープンな生態系を整えることも狙いと見られている。スマートフォンだけでなく、TV、冷蔵庫、洗濯機など家電製品、今後普及するモノのインターネット(IoT)機器にも大画面および音声認識インターフェースを採用して、単一の人工知能システムを形成する計画だろう。

 また最近では、アマゾンエコー、Googleホームなど人工知能技術をベースにしたスマートアシスタントが相次いで発表されているが、サムスン電子も同様のサービスを展開するのではないかとも予想される。

 ヴィブ・ラボの人工知能プラットフォームは、外部サービス提供者が自由に参加し、各自のサービスを自然言語ベースの人工知能インターフェースに接続できるという特徴を持っている。人工知能技術を保有していないサービス提供者も、自分のサービスをヴィブ・ラボのプラットフォームに接続することで、ユーザーの意図を分析し、有機的にサービスを提供することができる。また、ユーザーがサービスを使えば使うほどプラットフォームがより進化し、パーソナライズされたサービスを提供することもできる。

 サムスン電子は、スマートフォンを中心に様々な機器のプラットフォームに人工知能を活用・拡張するという「フォーンプラス(Phone +)」戦略を掲げるが、ヴィブ・ラボ・ラボ買収がこれに大きな拍車をかけるものと期待されている。

 なおサムスン電子は、これまで3〜4年間、人工知能の分野に多くの投資を行ってきた。特に音声認識の分野、自動音声認識(Automatic Speech Recognition)と自然言語理解(Natural Language Understanding)の分野に熱心だった。並行して、自分たちが持っていない技術を持つ企業を調査。ヴィブ・ラボ・ラボラトリーズに白羽の矢を立てた形だ。

 サムスン電子が保有している音声認識と自然言語理解技術に、ヴィブの人工知能プラットフォームを融合させることで、強力な人工知能アシスタントサービスを開発できるものと、サムスン電子側は見込んでいる。

 サムスン電子のイ・インジョン無線事業部副社長は「ヴィブ・ラボはさらに進化したオープンサービス生態系づくりに必要な自然言語認識とマシンラーニング機能、戦略的パートナーシップを保有している(中略)サムスン電子のすべての機器とサービスを統合する生態系づくりに適していると判断した」と買収の背景を説明した。

 ヴィブ・ラボの共同創設者でありCEOであるダグ・キトラウス(Dag Kittlaus)氏は「消費者がどのような機器を使用しても迅速かつ簡単に得たいものを得られるようになるのが、私たちの追求する未来(中略)サムスン電子の様々な機器のアプリケーションとサービスに統合された、インターフェースを提供できるはず」と述べた。

 ヴィブ・ラボは今後、サムスン電子無線事業部と緊密に連携しつつ、現在の経営陣が独自に運営を進める予定だ。