LINEが人工知能アシスタント採用か!? ユーザー数頭打ちの打開策なるか

ロボティア編集部2017年2月2日(木曜日)

 LINEの親会社である韓国・ネイバー(NAVER)が、1月26日に実績発表を行なった。そこでは、人工知能アシスタントサービス(AIアシスタント)を開発中であることが明らかにされた。開発を担当するのは、ネイバーとLINE社の技術者たちが集まった「プロジェクトJ」だ。プロジェクトJは人工知能アシスタントを開発することを目的とし、2016年11月に結成された。 プロジェクトJの成果物は、LINEに優先的に採用される見通しだ。

 LINE社は2016年11月に、人工知能エンジンをサービスに活用する試みを開始。日本のパークシャテクノロジー(PKSHA Technology)社のベドア(BEDORE)と呼ばれる人工知能エンジンをベースにした顧客対応サービスを、昨年、試験的にオープンしている。

 なお、ベドアはWeb 、チャット、メールなど様々なシーンで利用可能な、AIカスタマーサービスソリューションだ。コールセンターに24時間体制で人員を投入すると、人件費やコストがかさむ。ベドアはそのシーンを肩代わり。顧客の要望に24時間対応する。そのべドアをベースにしたサービスの名前は、「カスタマーコネクト」で、日本国内のラインペイの公式アカウントに採用されている。関連会社の顧客から寄せられた質問に答え、通話時間が長くなると、ライン公式アカウントで処理できるようにする機能を盛り込んだ。

 一方、ネイバーも、ジュニア向けサイトジュニバー内の「ジュニバーと対話」、オンラインショッピングサービス「ネイバートクトク」で、人工知能を使ったサービスを提供していている。いずれも、ユーザーの質問に対して人工知能が検索データを活用して回答を探す。

 ネイバーのサービスには、自社開発された人工知能「ラオン(LAON)」が利用されている。現在、ショッピングサービスなどでは人間のスタッフが回答に答えるなど、まだ完全に適用されている訳ではないそうだが、今後は人工知能が顧客の質問に接する頻度が高まると見られている。

 こう見ると、LINE社は外部で開発した人工知能をベースにした顧客応対サービスを提供しており、ネイバーは独自開発した人工知能を強化しようとしている。プロジェクトJは、両社がそれぞれ培った人工知能開発および運用能力、メッセンジャーアプリで培った技術と経験を統合する試みになると予想される。

 ネイバー側は、プロジェクトJの結果が、LINEアプリに影響を与えるだろと予測している。またLINEは検索などに比べてユーザーにより密接なアプリであり、より生活に近い対話や言葉が行き来するため、人工知能アシスタントサービスの品質向上に適しているともしている。

 なおプロジェクトJは、今年上半期に人工知能を搭載したスピーカーをリリースすること、そしてその後、家や車など人々の生活に浸透する人工知能ベースのサービスを公開することを目標として掲げている。

 ネイバーとLINE社が開発している人工知能アシスタントが、LINEアプリに優先的に採用される場合、まず日本語から先にサポートされる可能性がある。というのも、LINEの売上の3分2(73%)が日本で生まれており、LINEが力を注ぐニュースやタイムラインの月間アクティブユーザーの半数近くが日本のユーザーだからだ。

 この手のAIアシスタントとしては、IBMのワトソンが市場で先行している。ワトソンはすでに、コールセンターやホテルなど多くの場所で実用化されているが、一方、LINEなどIT企業にとっては、これまで築き上げてきたプラットフォーム(メッセンジャーアプリなど)で自社のAIをいかに強化し、サービスの質を高めていくかが問われている。一部、利用者数や新規ユーザーが頭打ちにあるとの報せもあるLINEだが、人工知能を使ったアシスタントサービスが打開策となるか注目したい。

photo by NAVER/LINE