米国内のウォルマート約50店舗では、ロボットが店内を巡回している。その容貌は業務用掃除機に酷似しているが、こなす仕事の種類や質はまったくの別物だ。ロボットは、通路を行ったりきたりしながら、商品の在庫状況を確認したり価格が正しいか確認する。これまで、人間のスタッフでなければ難しいとされてきた作業を代替しようとしているのだ。海外メディアによれば、ウォルマートはボサノバロボティクス(Bossa Nova Robotics)が製作した巡回ロボットをテストしつつ、店舗内の在庫管理業務をより低コストで行えるか確認している最中だという。
ボサノバロボティクスCOOのMartin Hitch氏は、最近、サンフランシスコで開催されたテクノロジーイベントで、「ウォルマートのロボットうちひとつは、毎日3回ずつ通路を巡回し、15万を超える製品が店頭の棚にしっかりと配置されているか確認する」と説明している。例えば、トイレットペーパーが少なくなったり、適切な価格表が場合、ロボットが状況を記録。人間のスタッフが在庫を補充、もしくは適切な価格表を設置するという風に作業が分担されているのだという。
ウォルマートのテストの結果は、人々のロボットに対する認識が、その稼働期間によって変わるという事実も立証した。2年前、ボサノバロボティクスがペンシルベニア州の店舗にロボットを初めて設置した際、現地住民は非常に大きな関心を示したという。が、今はほとんど気にしない。ロボットがいることが、まるで日常のようになり始めている。Hitch氏はまた、子供たちはロボットを非常に尊重する一方、大人は愚かな質問をしたり、無視する傾向にあると、“ジェネレーションギャップ”についても言及している。
なお、ウォルマートはロボットの運用を続けるなかで、ひとつの課題に直面している。それは、若者たちによるロボットへの暴力だ。店舗内では、ロボットに対していやがらせやいたずらをしたり、ショッピングバッグで殴りつけるなどの事例が頻発しているそうだ。ロボット導入を本格的に進めようと考えているウォルマートにとって、それら「ロボット虐待」は悩みの種となっている。
ボサノバロボティクスは、10代の若者たちのロボット虐待を解決するため、デザインを修正することにした。また、筐体に小型ディスプレイと照明を設置し、親しみやすい雰囲気が漂うよう設計を変更したという。なんだか、SF感と生活感が交差した涙ぐましい努力である。
ウォルマートの例を見る限り、サービスロボットの普及には性能+αが必要なのかもしれない。将来的に、ロボットは人間と同じ空間で生活することになるだろう。「いかに親しまれるか」という側面はとても重要であり、その手段はセンサーやAIの性能ではなくて、デザインやキャラクター性などになるかもしれない。一方で、人間側にも「ロボットリテラシー」が必要になってくる。そこにはおそらく、「隣ロボットを愛せ」的な新しい時代の道徳だけではなく、「殴って壊したら器物損壊で罰金〇〇円」というような法的知識も含まれるかもしれない。ボサノバロボティクスの製品は「ロボット虐待」を克服して、ウォルマートに“正規登用”となるのだろうか。今後のニュースがとても楽しみだ。
Photo by bossanova.com HP