「ロボット導入反対!」 ラスベガスのカジノ従業員がストライキ

ロボティア編集部2018年6月11日(月曜日)

カジノの街・ラスベガスにあるプラネットハリウッドリゾートのとあるバーでは、バーテンダーロボット・ティプシーロボット(Tipsy Robot、以下ティプシー)が稼働している。

2017年6月に導入されたティプシーは2台。1時間あたり120杯のカクテルをつくって来客をもてなす。注文はスマートフォンやタブレット。希望するカクテルや各種オプションを選択すれば、ロボットが1分以内にカクテルをつくってくれる。

ラスベガスを訪れる観光客にとって、ティプシーは楽しいエンターテインメント要素のひとつだ。ロボットがお酒をふるまうというSFチックなコンセプトは、カジノ街と相性が良い。しかし、ラスベガスのホテルや各店舗で働く労働者からは、ティプシーは歓迎されていない。ティプシー2台がこなす仕事は、人間のバーテンダー8人に相当するからだ。

当初、ティプシーはラスベガスの新しい名物のひとつに過ぎなかった。しかしロボットの導入で成果が出始めると、プラネットハリウッドリゾートだけでなく、ラスベガスに拠点を構える各ホテル、カジノで配送ロボットや無人注文システムなどの自動化設備を導入する動きが相次いだ。

「ロボットが仕事を奪う」という現象が現実になってしまった訳だが、これに対して同エリアの労働組合が反意を表明し始めている。

5月末には、組合員約5万人が5年契約の満了を迎えた。カジノ側は、彼ら労働者との契約延長を拒否した状態だ。労働組合は労働者の雇用安定、賃金引き上げ、セクハラ防止などを要求し、6月1日からストライキに乗り出した。

労組スポークスマンは、ホテルチェーンが投資を通じて数億ドルの利益を得てきた事実を指摘。労働者たちにその富を分ける時だとしている。

労組側は、さまざまな要求項目のなかでも特に、ロボットなど自動化設備の導入に反対している。賃金引上げや処遇改善もさることながら、仕事自体を失ってしまうことに危機感を感じているからだ。上記のバーテンダーをはじめ、ロボットルームサービス、デジタルチェックインシステム、ベルボーイやウェイターなどのサービス職従事者にとっては直接的な脅威となる。

労組スポークスマンはこれに対して、技術の進歩を否定しないとし、その上で大量失業を認めることはできない、また新たな雇用の創出とそれに伴う離職・職業教育プログラムをつくり、一方的な人員削減や解雇はやめるべきという立場を取っている。

現在、ホテル側と労組は交渉を進めている。ラスベガス地域を代表するMGMリゾートは、地域雇用創出、従業員と家族のために最大限の支援を準備している表明。その他、労組が要求したセクハラ防止などの要件にも積極的に対処を講じるとしている。しかしながら、その約束が果たされるかは未知数だ。

ラスベガス地域の労働組合は、1984年にも二ヶ月にわたる長期ストライキを行ったことがあるという。当時、ストライキにより生じた潜在的な損害は約2億ドルと見積もられている。

現在、ラスベガス市当局も両社の仲裁を進めているという。大規模なストライキが、1984年の悲劇を繰り返すことを避けるためだ。ラスベガス観光局の関係者は、「ロボット導入による良くない先例を残してしまうかもしれない(中略)市とホテル、労働者の両方に有益な方向に進むため互いに譲歩する姿を見せなければならない」と指摘している。