エストニア・タリン市の電子永住権(e-レジデンシー)管轄部署で総責任者を務めるKaspar Korjus氏は、海外メディアの取材に答えて次のように話した。
「未来には領土など物理的な条件は大きな意味をなさなくなる。ブロックチェーンとトークナイズエコノミー(TokenizeEconomy)が世界を変えていくだろう」
Korjus氏は、デジタル化が政府をどう変化させるかというビジョンを10段階に分けて説明する。
最初のステップは、既存のアナログドキュメントをスキャンしてデジタル化するというものだ。2段階目は、紙なしで電子署名できるシステムが普及すること。3段階目は、デジタル基盤施設(=インフラ)が構築され市民の利便性が高まることとした。
4段階目は「国境なき世界」である。これは現在、エストニアで進行中の電子永住権などのソリューションを指すものだ。5段階目は、クラウドにデータをアップロードし、地理的限界を超えること。6段階目は、政府が自分たちのデータを開放し、企業がこれを利用できるようになることと説明している。
7段階目は「目に見えない政府」だ。Korjus氏は「子供が生まれた場合には児童手当、65歳になれば年金が自動で支給されるなど、市民が何もしなくても政府が対象を見つけて(公共サービス・福祉)を提供しなければならない」と強調する。
続いてKorjus氏は、政府が発行したトークンを使って市民が税金を納付するなど「トークン・エコシステム」をつくること、人工知能(AI)を政府や産業分野の意志決定に活用することを、それぞれ8、9段階目と定義している。そして最終的(10段階目)には、国民が領土に縛られない「混ざりあう社会」(Merging Society)が到来するとしている。
現在、ほとんどの国家が1段階目にあり、エストニアは5段階目にとどまっているとKorjus氏は指摘。「ブロックチェーン技術は、それぞれの段階で真偽を確認して信頼性を向上させ、透明性を高めるのに役立つ(中略)例えば、4段階目で電子永住権を発行した際、ブロックチェーンのスマートコントラクト技術が使用される」と解説した。
ただし、ブロックチェーンは「小さな部分」に過ぎないとKorjus氏は付け加える。ブロックチェーンはそれ自体が重要なのではなく、人々を助ける「ツール」になった時に意味がある。そのため、インフラ構築、法制化、関連教育の強化など、大きなブループリントが描くことが必要というのが彼の主張である。
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Kaspar Korjus氏 Photo by Vimeo