ダ・ヴィンチの特許満了を契機に訪れる「手術支援ロボットの夜明け」

ロボティア編集部2018年9月6日(木曜日)

手術支援ロボット分野は、これまでインテュイティブサージカルが牽引してきた。同社製品「ダ・ヴィンチ」(da Vinci)は2001年から英国で稼働しており、現在では全世界を対象に4500台以上が供給されている。手術対象は拡大されているが、前立腺、膀胱、産婦人科手術が主な用途となる。

そのダ・ヴィンチの中心的な技術の特許満了に伴い、競合他社の巻き返しが期待されている。すでに英国では、手術支援ロボット・Versiusが登場。各病院への本格的な供給準備を開始している。また医療機器メーカー・Medtronic、Verb Surgicalなども関連ロボット製品の発売を控えており競争が激化する見通しだ。

それらのうちまず、CMRサージカルが開発するVersiusは、すでに英国の70以上の病院で使用されておりダ・ヴィンチのライバルを自称している。同社は Versius がより小型であり、従来のロボットよりも柔軟かつ幅広いタスクを実行できると強調。共同創業者Luke Hares氏は、Versiusが簡単に設置できる独立モジュール式のアームを保有しているとし、病院の回転率を高め経済的な運営を可能にすると説明している。

Versiusのロボットアームには人間の腕のように柔軟な関節があり、外科医はジョイスティックと3Dスクリーンを使用してコントロールすることができる。 CMRサージカルの共同創設者であり、Addenbrooke病院の外科医であるMark Slack氏は、手動の腹腔鏡ツールで縫合を教えるためには約80時間がかかるが、一部の外科医はこれをマスターすることができないと前置きした上で、Versiusは30分ほどで使い方を教えることができ、より多くの外科医が活用できると説明する。

Versiusは今後数ヶ月以内に、欧州で健康と安全に関する承認マークを獲得するもの予想されている。ロボットシステムの価格は明らかにされていないが、CMRサージカル側はインテュイティブサージカルのダ・ヴィンチより経済的だとしている。

一方、Googleの親会社アルファベットの医療子企業Verilyと、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療機器子会社Ethiconの合弁会社であるVerb Surgicalは、クラウドベースで機械学習によるサポートを提供する手術ロボットを開発している。ダ・ヴィンチよりも安価かつ小型なもので、2020年のリリースを目標としている。世界最大の医療機器メーカーMedtronicもまた、2019年に手術用ロボットを発売する計画を持っているという。今後、手術支援ロボット市場に大きな変化が起こるのか注目したい。

手術支援ロボット・Versius Photo by twitter

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