今年1月下旬、ベルギーのルーヴェン・カトリック大学病院は、網膜静脈閉塞症患者の手術に世界で初めて外科用ロボットを登用したことを大学ホームページにて発表。同時期には、英国のブリストル市内の大学のロボット研究者により編成されたリーチ(REACH=Robotics Engineering and Computing in Healthcare)研究グループのもとで、外科用ウェアラブルロボットの開発プロジェクトが発足した。
ブリストル市内の研究者が着手している外科用ロボットは主として泌尿器系、心臓血管系および整形外科領域の手術をターゲットとしており、将来的には上記領域におけるより複雑な手術にも対応させる予定であるという。
外科医の手指にフィットし、親指と2本の指と連動する外骨格ロボット、患者の体内を通過する触覚ロボット、および患者の体内の様子をリアルに映し出すスマートグラスの存在によって、従来の腹腔鏡手術に代わる手法が新たに確立されることになる。外科医の手指の外骨格ロボットはその手指の位置を記録後、患者の体内に挿入されたロボットに伝達する。
一方、外科医は患者の体内の組織や器官を身体で体感しながら、スマートグラスで患者の体内を調べる。その都度テレビモニターを見る手間が省けるため、手術の効率アップにつながる。
外科医中心モデルを構想しており、手術において主体となるのは外科医である。外科医自身が手術中に不自然な動きをする必要がないよう、従来の腹腔鏡手術に比して自然さを追求しつつ、日々ロボット開発に着手している。
なお、ロボットの受益者は外科医に限定されない。開腹しない方向で手術を行えるため、感染の確率が低い、失血量が少ない、回復が早いといったメリットがある。こうして、患者、外科医双方に恩恵をもたらし得る。
ブリストル泌尿器研究所(Bristol Urological Institute)のアンソニー・クーパリス(Anthony Koupparis)氏は、「外科用ロボットが英国やEU諸国の多くの患者を救うどころか、医療費の削減の面でも貢献し得る」とコメントした。
photo by KU Leuven(via youtube)