ASEAN5で進むロボット導入…自動化で東南アジアの労働力が大幅に代替

ロボティア編集部2018年11月19日(月曜日)

英国のリスク分析企業・Verisk Maplecroftは今年7月、「Human Rights Outlook2018」という報告書を発表。東南アジアの主要な製造拠点で働く労働者の56%が、ロボットを活用した自動化に脅かされていると指摘した。

報告書は、国連、国際労働機関(ILO)の見通しを引用。今後20年間の間にカンボジア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムなどの製造現場で働く労働者の半数以上が、自動化により仕事を失い、全世界のサプライチェーンのなかで、労働権侵害、人身売買のリスクが現れるだろうとしている。

カンボジア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムなど、いわゆるASEAN-5は、今後、経済発展の可能性が期待されている東南アジアの主要国だ。世界の消費財、小売業、サービス業、情報通信技術(ICT)分野で活動する多国籍企業のサプライチェーンとして、重要な役割を果たしている。一方で、労働者の権利が深刻に侵害されている国々であるとして、Verisk Maplecroftは「現代隷属指数」(Modern Sevalry Index)で高リスク国に分類している。

なかでもベトナムは、各国のなかで労働権侵害リスクが最も高い国として分類されている。労働者の67%、約3600万人に及ぶ人々が、ロボットなど自動化の影響を受け、搾取的な労働環境から逃れ、別の生計手段を探すことになるだろうと予想されている。

Verisk Maplecroftの人権部門責任者Alexandra Channer博士は、「適応能力がないか、社会的なセーフティーネットがない失業者は、低賃金、低熟練労働者の需要が減るなかで、より搾取的な環境に置かれる可能性が高い(中略)政府は、将来世代が機械とともに働くことができるよう、適応や教育する具体的な措置を取らなければならない。さもなくば、多くの労働者が底辺で競争することになるだろう」と説明している。

なおロボットの自動化によって大きな打撃を受けると予想されている雇用分野は、農業、林業、漁業、製造業、建設業、小売業、サービス業など。加えて、女性労働者が多く従事する衣類・繊維・履物産業も大きな影響を受けるとしている。カンボジアとベトナムの労働力のうち、それぞれ59%、39%が同業界で働いており、労働者の大多数は女性である。

カンボジアとベトナムは、産業雇用の85%が自動化によって打撃を受けると予想された。カンボジアでは約60万人、ベトナムは約260万人以上の女性が既存の仕事を失い、労働侵害がより高い環境で競争を余儀なくされるだろうとの分析だ。

Channer博士は「企業の自動化プロセスは、徐々にではあるが、サプライチェーンで従事する数百万人の労働者たちに意図しない重大な結果をもたらす可能性が高い(中略)企業責任者は、自動化が人権に及ぼす悪影響を確認し、市民社会や政府と協力してサプライチェーンへの影響を軽減させなければならない」と警鐘を鳴らした。

Photo by Alexander Schimmeck via Unsplash