AGRIBUDDY・北浦健伍氏に聞く東南アジア「アグテック×フィンテック」事情

AGRIBUDDY・北浦健伍氏に聞く東南アジア「アグテック×フィンテック」事情

Posted date:2019.04.19

カンボジアやインドなどアジアを中心に、農家向けの「フィンテック&アグテックサービス」を提供するアグリバディ(AGRIBUDDY)。同社では、テクノロジーを使って途上国の各農家のデータを収集・可視化しつつ金融機関と連動させる仕組みを構築。農家が、融資を受けられやすくなる環境を整えている。最終的な目標は、途上国の農家の生活を守るための金融&保険インフラを生み出すことだ。今回、CEOを務める北浦健伍氏に、アグリバディが注力しているカンボジアの状況をお伺いした。

■北浦健伍氏プロフィール
AGRIBUDDY Ltd. 最高経営責任者。1971年、大阪府生まれ・カンボジア在住。中学卒業と同時に渡米し、カリフォルニア州アナハイムのウエスタン・ハイスクールに転入。帰国後、消費者金融会社経営などを経て2010年よりカンボジアに移住。2015年1月にAGRIBUDDYを設立

※太字:インタビュアー 写真提供:AGRIBUDDY

-北浦氏がカンボジアに来られて約10年が経過しようとしています。現地の農業の状況はどう変化してきたのでしょうか。

まず牛農家が減りましたね。牛農家の代わりにトラクターの数が増えました。カンボジアは“金融天国”のような状況になりつつありますが、トラクターなども資金を融資してバンバン売り始めている。

カンボジアのその状況は良し悪しあると思いますが、農家がしっかりと融資を受けられる環境が整うことは非常に重要だと思います。世の中にアグテック系と呼ばれるさまざまなサービスはありますが、すごく良いテクノロジーや肥料があったとしても、それを買うお金がなかったら使えませんし、知識がなければ導入できません。一番の問題はモノがないことではなくて、それを導入するためのお金と能力がないということだと個人的に思っています。トラクターであれ、新しい機械であれ、そこに投資するだけのお金があればいくらでも導入できるわけじゃないですか。それがそもそもアグリバディを始めた発想のベースでもありますが。世の中の天才たちが色んな良い物をつくっている。「だけどそれどうやって売るの?」という。「売る相手が貧しくて売れないという現状」を変えていかなければならないと思っています。

-アグリバディはアグテックとフィンテックを組み合わせたサービスのように感じます。途上国で農家向けのサービスを展開するにあたって、どのような課題がありますか。それはそのままアグリバディがビジネスを展開するモチベーションでもあると思いますが。

ファイナンスがなければ、不動産や家、車は買えません。さらに言えば、携帯電話もそう。日本では、みなiPhoneを使っていますが、携帯に通話料を乗せて払っているから実質的にはローンですよね。金融がなければ、実質的にモノは動かないんです。

ただローンを組むにあたって、当然ですが、金融機関は貸付が返ってくるかどうかを知らなければならない。例えば、日本に住んでいて、三菱商事に勤めていますといったらお金は貸しやすい。30歳、独身となったら大体給料もわかりますから。源泉徴収票や給与明細があればさらに詳しく把握できますし、三菱商事側が嘘の給与明細を書くこともありません。また「どこに住んでいますか?」と聞いて、「港区のとあるマンションです」となれば家賃がいくらかわかるし、借りたローンがいくらかすでに計算できるので、労力をかけずにその人の返済能力を知ることができるんです。

しかし東南アジアとなると、給与明細なんて適当に書いている場合もあるし、納税証明も出てこない。それでも、まだ会社勤めをしていれば、例えば「プノンペンの会社なら月300ドルくらいかな?」などと想像できる。それが農家の場合は誰も想像できません。

農家に直接聞くと「去年は5000ドル儲けた」とか、「10000ドル儲けた」とか言うのだけども、それが実際は儲けじゃなくて売り上げだったり、数字が正しいかどうか誰にも把握できない。だからお金を貸すにあたって、貸し手には判断のしようがないのです。

僕はいつも強調するんですが、金融機関と農家の人たちが考えている「信用」は根本的に違います。農家の人たち、もしくは一般の人たちが言う信用は、「嘘をついたことがない」「人を裏切ったことがない」「俺はずっとここに住んでいる」「皆顔見知りだ」などです。一方で、金融機関の信用は「いくら返してくれるか?」のがすべてです。ここに大きなギャップがある。僕たちはそこを埋められれば、農家がお金を借りられるようになるだろうと考えた。そして農家がお金を借りられるようになれば、今まで彼らが欲しくても買えなかったような機材が買え、農業の生産性が上がるだろうというのがそもそものスタートなのです。

売る商品はたくさんある、買いたい物もたくさんある、お金を貸す人もたくさんいる。でも現実には、お金を貸す人は農家に貸せない、農家はお金を借りられないから物が買えない、売る人達も農家にお金がないから売れない、という状況を僕らが解消しようということが事業を開始した経緯かつ発端なんです。

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