カンボジアで広がるキャッシュレス決済アプリ「Pi Pay」CCOポール・フリーア氏インタビュー

Pi PayのCCOポール・フリーア氏

2019年10月の消費税増税に伴い、日本でもことさら話題になることが増えた、キャッシュレス化とデジタル決済アプリ。中国ではすでに、「Alipay」や「WeChatPay」が普及し“現金離れ”が加速していると広く報じられており、北欧、アフリカ、東南アジアの一部地域でも同様の傾向が顕著だ。そこで今回は、日本ではまだあまり知られていないカンボジアの実情にフォーカス。経済成長著しい同国内でユーザーの支持を獲得している決済アプリ「Pi Pay」(パイペイ)のCCO(Chief Commercial Officer、最高商務責任者)ポール・フリーア(Paul Freer)氏に話を伺った。

英・ロンドンの投資銀行に勤務していたフリーア氏が、初めてカンボジアの地を踏んだのは1994年。首都・プノンペンでビジネスを展開する友人のオファーが定住のきっかけとなる。1998年からは、スタンダードチャータード銀行のカンボジア支店が開業した際の初期メンバーに。2005年からはANZロイヤル銀行で勤務し、その後、ラオスに渡り取締役としてポンサバン(Phongsavanh)銀行の開業を支援している。2008年にカンボジアに戻った後は、日系企業マルハンがカンボジアで起ち上げたマルハンジャパン銀行の創業をジェネラルマネージャーとして2年間サポートした。世界各国および東南アジアの金融環境に見識が深い専門家だ。

Pi Payは銀行など金融インフラがまだまだ未成熟なカンボジア国内において、国民の決済・送金インフラとして定着し始めている。というのも、カンボジアでは銀行口座を持つ人口が5人に1人の割合とまだまだ少ない。そのため「Pi Payのような電子決済サービスが他国よりも受け入れられやすい土壌がある」とフリーア氏は説明する。Pi Payのサービスは2017年の6月に提供開始されたばかりだ。しかし、カンボジア社会への浸透スピードはとても速く、プノンペンのいたるところでサービスカウンターや看板を見かける。

「サービスを開始して約18か月が経過しましたが、現在、加盟している店舗数は約3,500、また約25万人のアクティブユーザーがいます。2019年以内に50万人のユーザーを獲得することが目標です」(フリーア氏)

カンボジアの人口約1,600万人に対し、2017年のモバイル契約件数は約1,857万台。1人が複数の端末を所持していることも多く、また都市部と農村部で差があるだろうが、モバイル普及率はかなり高いと言える。サービスのさらなる拡大を見込める余地は大きい。

Pi Payが目指すのは、カンボジアの人々の「金融包摂」(Financial Inclusion)だ。銀行口座を持つ人々の割合がまだ少ないことは前述したが、急激な経済成長を遂げ、人々の消費が伸びているカンボジアにおいては、融資や送金など、人々がより身近な金融サービスを受けられるようになることが社会課題のひとつとなっている。今後、「ユーザーの利便性をさらに向上させていく」とフリーア氏。現在、Pi Payへの入金はキャッシュマシーンによるチャージが主な手段だが、まもなく提携した銀行の口座とPi Payのデジタルウォレットとのダイレクト送金が実現するという。

「現在、サタパナ銀行、ABA銀行、アムレット銀行など5つの銀行、また複数のマイクロファイナンス事業者とも提携していますし、さらに3つほどの銀行との提携が決まっています。まだ完全な提携には至っていませんが、協定のサイン自体は約15社とすでに結んでいる。今後、ユーザーが田舎に住む家族に仕送りする際にも、手数料なしで送金できるようになります。また送金先の相手が銀行口座を持っていない場合、我々が口座開設のアシストも行います。カンボジアの人々が金融サービスの恩恵に与かれる状況を作りだすのが、 Pi Payのミッションだと考えています」(フリーア氏)

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。