カンボジア初にして最大のVC・SADIFが目指す革新と国の成長

また、そんな若い世代中心で構築されたエコシステムは非常に柔軟でオープンであり、それはカンボジア経済の「大きな強み」とも言える。「外国人だからといって、ビジネスがしづらいということはない」とケム氏は言う。前出のAGRIBUDDYは日本人の北浦健伍氏がカンボジアで起ち上げた農家向けのフィンテックサービスを展開するベンチャー企業で、SADIFも出資をしている。日本では、日経FinTechイベントで最優秀賞を受賞したり、サッカー・本田圭佑選手や、孫正義氏の実弟である孫泰蔵氏が投資を決めて話題にもなった日本を代表するベンチャー企業である。

個人的な見解と前置きした上で、ケム氏はこの新世代が起こす変化を以下のように予想する。

「この国の人口を見ると、内戦の影響から年をとった世代は少なく、たくさんの若者がいます。近い将来、私たちの世代がこの国を率いる中心になっていきます。こういった特殊な人口構成もあり、変化は割と『早く』そして『激しく』起こる、と考えています」(ケム氏)

大きな可能性と同時に、足元では課題も多いという。現在カンボジア国内に約300のスタートアップがあるが、そのうち投資可能な会社は50社、持続して投資を受けられる会社となると10~20社になってしまうという。「数とともにスタートアップの質を高めていくことが重要」だとケム氏は言う。

そのための取り組みとしてさっそく、ケム氏が主要メンバーとなりSADIFとは違う枠組みでSmart Scaleというインキュベーションプログラムを5月に起ち上げた。協賛にはアメリカの政府機関やスイスの会社が名を連ね、メンターには世界各国の人材が集まっている。

また、SADIFの現時点での運用額は、国内経済や投資先企業の成長を鑑みて「十分とは言えない」とケム氏は考えている。そのために日本の経産省を含む各国のさまざまな企業、団体ともディスカッションを重ねているという。さらに近々、著名なベンチャーキャピタルや外国企業と共同投資を行う予定を控えているとのことだ。

カンボジア初のベンチャーファンドと、ケム氏らの新世代がカンボジアにどのような変革をもたらすのか。今後の展開を楽しみに見守りたい。

■取材協力:天沢燎

※本記事はファーウェイ・ジャパンのデジタルオウンドメディア「HUAWAVE」掲載の「カンボジア初のベンチャーキャピタルSADIF 新世代が変えるカンボジアの未来」を加筆・再編集したものです。

河原良治

記者:河原良治


神奈川県生まれ。ニューヨーク市立大学ハンター校政治学部卒。国連日本政府代表部インターン、IRコンサルティング会社での法人営業を経て、フリーのコーディネーターに。国内外のクライアントに通訳、翻訳、調査、コンテンツ制作等のサービスを提供。