アジアベンチャーの聖地・シンガポールで聞いたスタートアップの課題と日本人へのメッセージ

ロボティア編集部
ロボティア編集部
シンガポールのベンチャーが集うシェアオフィスの風景

ハン氏は少子高齢化など先進国ならではの課題が山積みである日本だからこそ、そのアドバンテージを活かせる分野もあるとする。例えば、介護や福祉だ。今後、他国には真似できないクオリティのサービスを、外国人向けに開放していくのもひとつのビジネスになるのではないかと言う。

ハン氏によれば、シンガポールでは少子化や価値観の変化により、子どもが老親を介護するという考え方が薄れてきている一方で、老人福祉施設は低所得者向けばかりで、富裕層や中間層向けの施設もない。距離的に近い他の東南アジア各国では高齢者施設産業をつくろうという動きはあるが、スキルやノウハウがなく困難に陥っている。一方、日本には関連産業のノウハウが蓄積しており、そんな日本で老後の生活を営みたいというシンガポール人は決して少なくないというのだ。しかも日本の場合、地方では安価な土地がたくさんある。言語などをサポートできる外国人向け福祉・介護施設というのもひとつのアイデアになるのではないか。

こうしたアイデアはほんの一例に過ぎない。日本社会と海外各国の強みや社会課題を結び付ければ、新しいアイデアはたくさん湧いてこよう。多くの外国人がすでに日本を訪れ、その社会や文化を理解し始めている現在、現実的なアイデアが増え続けるだろうとハン氏は言う。

「多くの日本人が日本を去りたいと考えている一方で、より多くの外国人が日本に行きたいと考えています。日本はとても長い間、独自の文化や作法を守ってきました。そのため、実際に人々の習慣が変化するのには、諸外国より時間がかかるかもしれません。しかし、多くの外国人が日本を好きな理由は、日本がその独自の文化や習慣を守ってきたからこそ。伝統と変化の調和は簡単ではありませんが、外国人の視点から見た時、日本が持つ可能性はビジネスや社会構造、文化的側面などあらゆる観点からとても大きいと感じています」

急成長を遂げるシンガポールのベンチャーエコシステムの中においても、課題や問題はある。一方、経済規模のシュリンクが進む日本においても、ベンチャーが大きな成功を勝ち取れるチャンスは決して少なくない。ハン氏の指摘からは、環境や状況を言い訳にせず、社会やグローバル市場で何が必要とされているかを真摯に考え続けたプレイヤーにのみ道が拓けるという真理が浮かび上がってくるようだ。

■写真・取材協力:河原良治・天沢燎

※本記事はファーウェイ・ジャパンのデジタルオウンドメディア「HUAWAVE」掲載の「アジアスタートアップの新聖地・シンガポール その課題と日本への期待」を加筆・再編集したものです。