ミャンマー発 AIダイニングアプリ「Yathar」をしかける日本人起業家

Yathar代表取締役CEOの市川俊介氏

ところで、なぜ市川氏らはミャンマーで起業しようと考えたのだろうか。Yatharもさることながら、市川氏自身のバックグラウンドも非常にユニークだ。

「僕自身はもともとジョン・レノンが好きで、タレントとして芸能活動をしていたのですが、同時にバックパッカーをしながら世界各地を転々としていました。28歳の頃に芸能界を引退した後、それまでの経験から世界各国の課題を克服できるツールはなんだろうかと考えて、インターネットに興味を持ちました。そこでGMOに入社させてもらい、ベトナムやミャンマーなど東南アジアを中心とした海外事業の責任者として活動することに。当時は、海外企業のM&Aやネットインフラサービス立ち上げを担当していました」

東南アジアビジネスに関わるようになっておよそ10年。自由化が進み、まだまだ課題が山積しているミャンマーという地を次のビジネスの挑戦の地として選んだ市川氏だが、その発展のスピードにはとても驚かされるという。

「体験したことはないですが、日本でいうところの明治維新や高度経済成長が一気に訪れていると表現すればイメージしやすいでしょうか。とはいえ、足りないものがまだまだ多いのも事実。例えば、ミャンマーではインターネットとフェイスブックが同義と言っていいほど認知度が高い反面、コアかつ専門的なアプリやサービスはまだまだ少ない。私たちとしては、この国の文化の根幹になるようなダイニングアプリ・サービスを普及させたいと考えていて、Yatharはそのひとつの試みです」

市川氏らが最新の人工知能をアプリに取り入れる理由は、決してカッティングエッジなサービスを誇示したいというわけではない。Yatharの根底には、「大切な人と共有する食事という時間を大事にしてほしい」という思いがあると市川氏は言う。

「ミャンマーに限らず、食事は人の欲求のなかでも最たるもの。そして、人と人が場を共有できる有意義な時間です。人工知能が各ユーザーに寄り添って時々の気持ちを理解することができれば、一回一回の食事の質を高めることはもちろん、店選びの時間も労費せずに済む。そのように、人々の生活を支えるようなインフラにしていきたいと考えています」

今後、Yatharはどのように発展を遂げていく予定なのだろうか。市川氏は「縦の発展」と「横の発展」を考えていると説明する。

「まず縦の発展としては、Yathar自体のサービスのカタチを深堀りしていきたい。例えば、人工知能によるレコメンドと、ユーザー自ら検索で探すことができる仕組みのバランスです。AIが一方的におすすめするというのは、便利である反面、ユーザー心理に100%応えられているとは言えません。そのため、AIはあくまで忍者のような存在としてユーザー検索をサポートしていきつつ、ユーザー自らが『行きたい場所』『食べたいもの』などを便利にマルチ検索できるよう機能を拡充していく計画です。今年7月には機能の大幅なリニューアルも予定しています」

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。