AI技術を利用した中国の医療プラットフォーム「平安グッドドクター」とは

ロボティア編集部
ロボティア編集部

では、実際の使い勝手はどうなのだろう。このアプリを利用している中国在住の日本人に聞いてみた。

「都市部に住む、小さい子供のいる親や、高齢な両親のいる人はみんな利用しているはずだ。やはり24時間、いつでも健康相談できるのが便利。この前も、深夜急に子供が嘔吐したのでオンラインで問診してもらい、翌朝すぐに病院で診てもらうことができた。ただ、多くの人は病院の診察予約を取るためだけにこのアプリを使っている傾向もある。以前は病院で3時間以上待たされるのが当たり前だったのでこの点だけでも素晴らしい。ただアプリからヘルスケア用品が買えるECサイトは売り切れが多く、届くのに時間もかかり現在は使用していない」(広州在住の日本人女性)

「中国の地方都市に住む中国人の義母はよく利用している。問診には有料と無料のサービスがあるが、名医による有料の動画問診(15分あたり300~2000円)のほうが義母は安心するので、そちらを使っている。無料のほうはろくに症状も聞かないうちに診断書を発行したり、短時間で終わらせる医師も多いので、そこまで信用できない。義母は今まで病院で待つのが嫌で身体に不具合があっても我慢していたというが、アプリで気軽に医師に相談できるので、離れて暮らす妻も私も安心している」(重慶在住の日本人男性)

現地の中国人に話を聞いても、やはり一番のメリットは病院の診察が待ち時間なしで予約できることと、処方箋の即時発行だと口を揃える。この点だけをとっても平安GDは中国の医療環境を劇的に改善したといえよう。

加えて、平安GDは彼らのプラットフォームを利用し、中国で社会問題となっている内陸部の貧村の医療改革に取り込んでいる。2018年1月に「郷村グッドドクター扶助プロジェクト」を開始し、1万人の村医を支援するとともに、中国全土の貧しい地域に1000軒のスマート診療所を開設。最新の医療設備や医薬品のスピード輸送も行うと発表した(現在ではアプリに「村医版」が追加された)。これは中国政府が推し進めるヘルステック国家戦略「中国健康2030計画」とも合致した動きで、平安GDの成長にとっても大きな可能性を秘めているといえる。

■「医療は長期的ビジネス」現状では赤字状態の平安GD

メディテック分野で他の追随を許さない平安GDだが、そのビジネスモデルについても簡単に解説していきたい。平安GDを運営するPing An Healthcare and Tech(平安健康医療科技)はもともと、2014年に中国の金融コングロマリットである平安保険グループの完全子会社として設立(前身はPING AN HEALTH CLOUD COMPANY/平安健康互聯網股分有限公司)。翌年に平安GDをリリースし、同4月には5億ドル調達し時価総額が30億ドルを越え、早々とユニコーン企業(評価額10億ドル以上)となった。そして2018年5月、香港市場で1200億円規模のIPOを実施し、上場を果たした。
 
最新のIRによると、2018年上半期の営業収入のうち、約55%はECサイトでの売り上げが占めている。以下、約22%が消費型医療(美容や口腔など自由診療や遺伝子検査、人間ドック)、約17%がメイン事業のファミリードクターサービス、最後に健康データの販売・広告収入となっている(約5%)。

こうした複合的な収入構造を持つ平安GDだが、目下の業績を見るとまだまだうまくマネタイズできていないようだ。2018年上半期の営業収入は11.23億元(約180億円)で、前年同期と比べ150%増えたが、4.44億元の純損失(前年同期比2.6%減)となった。中国経済メディア「21世紀経済報道」(8月22日付)に掲載されたインタビュー記事で、CEOの王氏は「本来、医療事業は10年、20年かけてゆっくり成長していく長期的なビジネス。今後は海外市場を開拓し、会社を変革していく」とコメントしている。

一方で、平安GDの役割については、別の見方もある。「日経クロストレンド」の記事によれば、親会社である平安保険グループ傘下の保険会社の営業マンは、まず勧誘したい顧客に平安GDのアプリを薦め、その人物の問診歴や通院状況を把握した上で、おすすめの保険商品を勧めるというのだ。同記事には「ドクターアプリは営業ツール」だと指摘しているが、平安GD単体では赤字でもグループ全体として見たとき、その貢献度合いは決して小さくないのだろう。