「多くの人が、危機に直面した際に大きな企業に備えがしっかりあると考えています。私はそれに同意しません(中略)1年ほど経てば、今ある大手企業の40%は見当たらなくなるでしょう。多くの企業の現金が底をついています」
シリコンバレーのスタートアップ・Ciscoを世界時価総額1位(2000年)の企業に引き上げ、1997年、2001年、2007年など数回にわたり危機を乗り越えてきた、ジョン・チェンバース前Cisco会長が、そう新型コロナウィルスの影響について警鐘を鳴らした。海外メディアがその詳細を報じた。
チェンバース氏は3月22日、米国にて映像開催されたイベント「Techonomy」で、「大企業は危機の際に安定していると考えられがちだが、実際の生存能力は規模と関係なく、変化にどれだけ適応できるかが最も重要だ」と指摘した。また、自らの仮説をいち早く検証し、正しければ急激に成長し、間違えた際には素早く方向転換できるスタートアップは、現在のような危機的状況でより迅速に変化できると語った。
チェンバース氏は「今、我々は野球で例えるなら9回のうち1回表の時点に過ぎない。危機は我々の予想より長く深い」とし、「私も私の考えが間違えならばいいが、我々は最善の状況を希望しつつ、最悪に備えて行動する必要がある」とした。
特に今回、チェンバース氏は危機対応のための攻略集(Playbook)を公開し注目を集めた。まず、危機の際にはリーダーは隠れてはならないと強調。皆が信じて頼れるよう、進んですべてのことを透明に公開し、果敢に行動する必要があるとする。次に現実的に判断しなければならないとする。すでに明らかになった現象を見るのではなく、根本的な原因を探ることが重要であるという意味だ。加えて、会社を生存させるために構造調整の決断を下す必要もあると指摘。徹底的に現実的になった時に、自分をまた創造することができるとした。
第三に未来のための新しい絵を描き、絶えずこれを社内でアップデートすべきと助言した。 過去と異なるビジョンを提示・実践しながら、チームやスタッフに語りかけつづけるべきだと説いた。そして最後に全ての過程を進めるのに、長い時間をかけてはならない」と強調した。素早く決定して断固として行動していくことが必要とした。
チェンバース氏は、1997年のアジア通貨危機、01年のドットコムバブル、08年の米金融危機などを経験。その際に危機対応マニュアルを身につけたと自身の体験を語った。1997年の金融危機当時は、およそすべて技術企業がアジアから脱出したが、Ciscoは逆にアジア営業組織への投資を2倍に増やした。01年のドットコムバブルの時は、シスコの株価が80%も下がり、会社が崩壊寸前だったが、非常経営計画を立て51日以内にその経営計画を執行したという。チェンバース氏は、長期的な視点でみれば、危機はいつもより大きな未来のために巨大な賭けができる人々のための訓練のきっかけだったと述懐した。
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