日本において迅速な実施が求められているオンライン授業。いち早く全国規模の実施が始まる韓国では、肖像権や「授業著作権」の侵害が起こらぬよう、慎重な運用を進めるべきだとの声が上がり始めている。
韓国教育部は4月9日から、中学3年生、高校3年生を対象にオンライン授業を開始。その後、16日、20日と順次、全国すべての学生にオンライン授業を実施していく予定だ。その際、小学1~2年生以外の学年の授業では、リアルタイムでコミュニケーション・対面が可能なリモート会議ツールが導入される。授業時間の大半は学習コンテンツや課題中心に進められるが、出欠の確認や一部科目の授業などには部分的にそれらツールが活用されている。
そこで問題としてされているのは、リモート会議ツールが相手に知られることなく授業中の風景や学生の顔をキャプチャー・録画できるという点だ。可能性として、サイバーブーリング(ネット上のいじめ)に利用されたり、授業内容が流出する事態に繋がるとして懸念が提起されている。
韓国のある中学校教師は、対面授業ができるのはリモート会議ツールの長所だが、オンラインで生徒を管理することは容易ではないと説明。授業著作権や教師の肖像権に対する議論は学校でも増えており対策も進められていると話す。
また全国小学校教師労働組合も1日、教育部に対し「オンライン開学要求事項」を提言。そのうちのひとつとして、教師の肖像権および個人情報侵害問題の防止に触れている。慶尚南道教育庁は、教師の顔をキャプチャーし侮辱・セクハラにおよぶ行為、また講義内容を流布するなど権利侵害事例に対し、関係法令に基づき加害生徒を措置すると9日に明らかにした。
一方、教育部は「学校における遠隔授業実務ガイド」という資料も配布。省庁関係者は、肖像権や著作権に違反する行動についての内容を同実務ガイドラインに盛り込んだとし、授業画面をキャプチャーしたり、画面の人物の映像・画像を外部に配布してはならないというという内容が含めたとしている。
今後、日本においてもオンライン授業が拡大すれば、同様の問題が浮上してくるかもしれない。学生もしくは生徒の道徳心に根差したガイドラインの設定も急務だが、やはり「キャプチャーできないリモートツール」など、技術側の開発や抑止力も必要となろう。今後、課題を解決するサービスやテクノロジーが登場するのか。注目したい。
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