リモートフレンドリーのその先へ...不確実性が加速させる「リモートファースト」

ロボティア編集部2020年3月19日(木曜日)

これまでの十数年間で、インターネットの高速化や作業用ツールやソフトウェアの高性能化が進み、「リモートフレンドリー」な企業が大幅に増加した。そして世界的なコロナショックの影響が、「リモートファースト」(remote-first)という新しい企業活動の潮流を加速させている。

リモートフレンドリーは、在宅勤務などリモートワークを、企業や従業員が必要な場合に“オプション”として柔軟に扱う。一方、リモートファーストはリモートで作業することを基本とし必要な場合にのみオフィスを使用する。現在、多くの企業が必要によってリモートファーストを強いられている状況だが、結果的に生産性が高まったという判断があれば、今後、継続的に大きく働き方を転換する企業のケースも増えていくはずである。

とはいえ、リモートファーストを実践し企業の競争力を高めるためには課題がいくつかある。例えば、時間ではなく生産性やアウトプットを追跡する体制を整える必要があることだ。各企業やチームの明確な目標および優先順位を決定し、その実現のためのアウトプットがどれくらいに達しているかを常に把握する必要がある。個々人の責任を高めるとともに時間を管理する能力を高めるスキルアップ、また組織全体の変革が必要となろう。

リモートファーストを実践する上では、「タイムゾーン」の管理も課題となる。仮に世界的な規模で事業を行うリモートファースト企業の場合、マネージャーが同時刻に複数のスタッフを管理することが難しい。そのため、なるべく小さいチーム単位で動くというのもひとつの解決策になるとされている。

一方、実際にリモートファーストを実践する企業は、スタッフが別個の場所で活動するという特徴が「地理的多様性」や「カスタマーサービスの改善」「ニーズの吸い上げの効率化」などのメリットに繋がるとしている。ワークライフバランスが整い、離職率の低下も顕著だそうだ。世界一般的に、ソフトウェア開発者は高額な給料やストックオプション、もしくはさまざまな福利厚生を約束されてなお離職率が非常に高い傾向にあるという。しかし、リモートファーストを実践する企業では、その傾向が相対的に低くなるとされている。

一見、似ているように思えるリモートフレンドリーとリモートファーストだが、その間には大きな違いがある。企業にとってどのような働き方が最も好ましいか。業種によって、答えはさまざまだろうが、2020年を契機に新たな試みが相次いで始まっていくかもしれない。

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