中国30大ロボット企業【第七弾】カラフルな巨人たちを猛随[中編](瀋陽新松ロボット)

ロボティア編集部2022年11月7日(月曜日)

(この記事は「中国30大ロボット企業【第七弾】カラフルな巨人たちを猛随[前編](瀋陽新松ロボット)」の続きです。)

中国産業用ロボット業界に追い風が吹く

中国の製造業は歴史的な背景もあり、欧米日韓台などの先発勢に対して後発勢として出発せざるを得なかった。1990年代から2000年代にかけての、製造業勃興期は、中国は戦略的に安い人件費をフル活用し、とにかく貪欲に世界中の製造業の誘致に力を入れた。「来料加工」(材料を外資系企業が提供し中国企業は加工のみを担当)や「二免三減半」(外資系企業は企業所得税を2年免除、その後の3年は半額免除とする優遇政策)など、製造強国となった今の中国からは信じられないような政策を打ち出し、貪欲かつしたたかに国を富まし、経済を発展させ、着実に技術を獲得していった。

2002年の日中の名目GDPは日本4.18兆ドルに対して中国は1.47兆ドルだった。2022年現在、日本のGDP4.3兆ドルに対して中国GDPは20.26兆ドル(10月までの集計)、日本の1/3程度だった中国のGDPは、わずか20年で日本のおよそ5倍近くにまで成長した。製造業の成長がそこに果たした役割は大きい。その中でも半導体産業と、先端製造業の育成は戦略的な重要度が高く、瀋陽新松ロボットは後者の代表企業として広く知られ、中国の智能製造の体現者として、強く期待される企業なのである。
※GDP関連のデータの出典は「世界経済のネタ帳

その瀋陽新松ロボットが、ファナック、ABB、KUKA、安川などの巨人たちに、大きく水を開けられており、その距離を縮める事が困難であるというのが前回記事の主旨であった。しかし上記のマクロ経済環境から見て、中国の産業用ロボット産業には追い風が吹いているといっていいだろう。2016年度には中国美的グループが50億ドルを投じてKUKAの94.55%の株式を取得し傘下に収めた。これにより「巨人たち」の一角が中国資本となり、大きなシェアと、そして先端技術が中国のものとなった。中国政府は現在、中国市場の産業用ロボットの国産化比率50%を目標として掲げ、関連政策を打ち出している。

瀋陽新松ロボットもこの流れに乗り、巨人たちに追随するために次々と布石を打っている。それは大きく以下の4方面から遂行されている。

①M&A
②外資系メーカーとのアライアンス
③システムインテグレーション力の強化
④AGV等の移動ロボットへの参入

次回はこれらの戦略の有効性と、今後の予測についてレポートして行きたい。
(「中国30大ロボット企業【第七弾】カラフルな巨人たちを猛随[後編](瀋陽新松ロボット)」に続く。)