【アリオ実験③】フードコートのSOS?

ロボティア編集部2023年3月20日(月曜日)

そしてついに12月15日に「いきなり!ステーキ」アリオ橋本店において、日本で最初のフードコート配送の実証実験が始動した。まずは注文者が「いきなり!ステーキ」店頭でステーキを注文する。あつあつのステーキが焼きあがると、猫ロボットが店頭まで料理を取りに行き、受け取ったステーキを人混みを回避して走行ルートを選びつつ、お客様の席までお届けするという仕組みだ。

店頭に看板をたててはあるが、お客様が自らロボット配送を依頼してくる事はない。実験スタッフは特に小さなお子様をお連れのファミリー層のお客様を目掛けて声がけをする。「ロボットが直接、座席までステーキを配膳してくれるサービスです。あちらの専用席に座って頂けませんか?」

最初は怪訝な表情をされていたお客様も、愛嬌のある猫ロボット(BellaBot)のポスターをお見せするとたいていはお子様に「どう?猫ちゃんにステーキもって来てほしい?」と相談する。小さなお子様はかなりの確率で頷いてくれる。フードコートにおけるロボット配膳は日本最初なのだから、当然このサービスは市場には認知されていない。そのためスタッフから声がけをしてこのサービスの存在をわかってもらわない事には何も始まらない。「お客様ひとりひとりに最高の体験をお届けしたい!」という思いで実験スタッフは声をかけまくった。初日の配送実績は以下の通り。

■注文総数:16件(2.7件/h)
■利用者総数:27人(4.5人/h)
■ロボット配送回数:18件(3回/h)

初日こそ苦戦したものの3日目の17日土曜日には

■利用グループ数:27件(4.5人/h)
■いきなりステーキ注文者数:49人(8.2人/h)
■ロボット配送回数:30回(5回/h)

を記録。その後1月の実験終了まで毎日50人近いお客様にステーキを届け続けた。実験は成功したと言える。この時の心境を実証実験のプロジェクトマネージャーを努めた渡辺豊コンサルタントは以下のように語った。

-毎日、毎日が緊張の連続で、正直何度も逃げ出したくなったほどでした。ロボットが人にぶつかったらどうしよう、ステーキを目的地まで届けられなかったらどうしよう。協力頂いたお客様やいきなり!ステーキ様にご迷惑をかけたらどうしよう、と思ってましたね。しかし私達が開発したオペレーション、走行システム、そしてBellabotは、実証実験の間、終始トラブルを起こす事なく、ステーキの配送を続けてくれました。

-ある日はお客様が入りすぎて、どの店舗にも長蛇の列が出来てしまい、ロボットの導線がすべて塞がれてしまうという問題が起こりましたが、ロボットは自律的に最も通りやすいルートを選別し、そこにならぶ人に「ロボットが通るにゃん」と声がけをし、道を譲ってもらいながら、目的地にまでたどり着きました。プロジェクトは困難の連続でしたが、日本のフードコートのロボット配膳の可能性を垣間見る事が出来ました。

-私達はフードコートにおけるロボットによる配膳サービスにFSOSという名前をつけていました。本来はFood Serving Operation System(配膳OS)という意味なのですが、この実証実験を通じてある関係者から「これではフードコートのSOS」ですね、と声をかけて頂けた事がとても嬉しかったです。