ヌリエル・ルービニ教授が世界経済の活路を提言

ロボティア編集部2015年11月4日(水曜日)

 2008年にグローバル金融危機を予測したニューヨーク大学レナード・N・スターン・スクールのヌリエル・ルービニ教授が、米国の金利引き上げに伴う「テーパテントゥラム」(taper tantrum・緊縮発作)は再発しないだろうと述べた。2013年5月、当時の邦準備制度(FRB)・バーナンキ議長が量的緩和縮小(テーパリング)の可能性を示唆した時には、債券の投げ売り、金利急騰、新興国の資金離脱など金融市場に混乱が起きたが、同じようなことは起きないとしている。

 第16回世界知識フォーラムに出席したルービニ教授は、17日にメディアのインタビューに答え、「近いうちに利上げを断行するというFRBの金融政策の方向は、すでに十分に市場に伝えられており、米国の政策利上げのスピードは非常に遅く、徐々に行われる」と説明した。

 また、中国のグローバル過剰貯蓄(savings glut)と、欧州・日本のグローバル過剰流動性が、米国の金利引き上げに伴う衝撃を軽減する役割となることにも期待を示した。FRBは金利引き上げ時期について12月もしくは来年3月と表明している。

 ルービニ教授は、「グローバル市場の変動性と不確実性が拡大している」とし、「中国経済の減速懸念や原材料価格の下落が、これらの変動性の要因だ」とした。中国政府が予想した今年の経済成長率7%を懐疑的に見ており、実質経済成長率は6.5%程度になると分析している。また、2020年には5%台に成長が鈍化するとも予想している。

 ただし、中国の経済成長ハードランディング(hard landing)ではなく、バンピーランディング(bumpy landing)だと指摘しており、中国経済の減速が世界的な金融市場の不安定要因として作用するが、世界経済危機にまではいたらないだろうと指摘している。中国経済に対する行き過ぎた悲観論を警戒した形だ。

なお、ヨーロッパ・日本の量的緩和政策については、同地域のインフレ上昇と経済成長に適した決定であり、経済的な影響を最小限にとどめた避けられない選択だったと、これを支持した。

 新興国の金融政策については、「経常赤字と財政赤字が同時に発生しているいくつかの新興国は、物価上昇と成長鈍化に苦しめられている」としながら、「緊縮的な金融政策を維持し通貨価値切り下げ(為替レートの上昇)を守りながら、物価上昇を抑制して段階的に経済を改善していかなければならない」とした。特にブラジルは財政均衡を急がなければ、国家信用格付けの下落と、レアル安を避けることができないだろうと警告している。

 また世界経済の今後について、グリーンエネルギー、バイオ、ソーシャルメディア・IOTなどの情報技術、ロボット・ドローンなどのハイテク製造業、フィンテックなどの金融業界、ナノテクノロジーとインフラストラクチャなど多くの産業分野で、イノベーションや投資を進め、世界経済の活路を模索しなければならないとしている。

photo by jewishbusinessnews