[独自企画]アシリパさんもびっくり②アイヌ語ロボット製作に向けて、まずは勉強、勉強!

ロボティア編集部2022年1月17日(月曜日)

(写真:中川裕著「アイヌ文化で読み解くゴールデンカムイ 」)

知識と経験が不足している。そして行動も不足している。

それでは、アイヌ語ネイティブを目指すコミュニケーションロボットを創るにはどうしたらいいのだろうか。まずはロボットがなければならない。それは素人考えでも分かる。それからそのロボットに、人とコミュニケーションをするアルゴリズムが搭載されている必要がある。しかし既存のアルゴリズムでのアイヌ語コミュニケーションは果たして可能なのだろうか。それともゼロから開発する必要があるのだろうか。筆者はロボット専門誌の記者ではあるが、ロボットの作り方についてはまったく分からない。

しかし、目指したいもののイメージはある。せっかく創るのであれば、ただアイヌ語を話すだけではなく、老若男女のアイヌ語話者の増加につながるような、ずっと一緒にいたいような、楽しいコミュニケーションロボットを創りたい。下手の考え休むに似たり。筆者はまずロボティア編集部屈指のテクノロジー通のT記者に相談する事にした。T記者は東京大学の大学院でロボット工学を研究した後、ロボットの研究の為に人体の研究に進み、そこから医学雑誌の編集デスクを経て、ロボティア編集部に入ったという特異な経歴を持つ。

単刀直入に「T君ならこの難題にどうやって挑みますか?」と聞いてみた。すると

-そんなの、難しすぎてどこから手をつけていいか分かりません。
-英語や日本語でも、そんなロボット創るの無理ですよ。
-はやめに諦めたほうがいいんじゃないですか。

と身も蓋もない返事が返って来た。T記者によるとSiriをはじめとする自然言語処理(NLP)技術は、米国アップル、アマゾン、グーグルや中国の科大訊飛(アイフライテック社)が巨額投資を続けている分野だが、いまだに「自然なコミュニケーション」とはほど遠いレベルに留まっているという。「たとえばSiriがアイヌ語対応していたとして、楽しいコミュニケーションができると思いますか?」

そう言われてみると、全然楽しくなさそうだ。筆者は一時期、英語の勉強の為にSiriを英語設定にして見た事がある。結果、自分の英語の下手さとSiriとのコミュニケーションのつまらなさを思い知らされただけだった。これではアイヌ語話者が増えるどころではないだろう。まだ誰も実現した事がない難しいテーマに挑むのだから、前途多難は覚悟していたが、どうやら思った以上に大変そうだ。

要するに、今はビジョンだけがあって、それ以外には何もないという事なのだろう。知識と経験は全くない。行動も全く不足している。よし決めた。ロボットのこと。自然言語処理のこと。コミュニケーションのこと。そしてアイヌ語のことを、まずは勉強しよう。先人たちに会いに行こう。そして仲間になってもらおう。