【現場レポート】時代を先取りするイオンモール白山の館内配送ロボット

ロボティア編集部2023年7月24日(月曜日)

[写真:イオンモール白山に導入された日本市場向け仕様の優地ロボット]

イオンモール白山における「自律走行ロボットを活用した館内配送サービスの実証実験」が先月正式にリリースされた。現場のプロジェクトマネジメントを担当するエリアカザン社の許可を得て、実際の走行現場を取材させてもらった。その時代を先取りする先進的な取組みについてレポートする。

1.広大なモール空間を走行
このプロジェクトでは中国深圳市の優地テクノロジーのロボットが使われた。優地テクノロジーは過去に1万台近いロボットを世界市場に向けて出荷して来たが、日本進出はこれが初めてで、このプロジェクトのために日本向けロボットを新たに開発したという。日本向けに開発したのは日本製エレベータとの連動機能、スウィングドアとの連携機能、日本語のインターフェイス、そして日本語音声である。優地テクノロジーとしてはこれらの機能をおよそ3ヶ月ほどで実装しなければならず、開発はいわゆる「デスマーチ」状態であったという。

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またイオンモール白山は敷地面積約175,000平米という広大な空間に200を超すテナントを有する巨大モールであるが、今回のロボットはモール側のバックヤードから主要テナントに向けて必要資材を配送し続けるというミッションを負っている。バックヤードからテナントまでは片道数百メートル、ルートによっては往復で1キロ近い。途中でエレベータに搭乗し、さらには業務用スウィングドアを通過しなければならない。しかもショッピングモールの特性上、大勢の一般客の中を縫って走行しなければならず、技術難度は極めて高い。自律走行ロボットとしてこのミッションに耐えうるロボットは、少なくとも現時点の日本市場においては存在していなかった。


[写真:広大な空間を有するイオンモール白山(同社)]

2.エレベータ連動
日本の大型ショッピングモールとしての初めての試みとなるエレベーター連動は、三菱電機エレベーターとの連携となった。日本語の経産省の要求するロボット・エレベータ連携インターフェース定義(RRI B0001)に則り、日本の安全基準に耐えられる連携機能を実装しなければならない。またエレベーター連携の実操作は日本のモール側・テナント側のスタッフが行えるようフレンドリーなインターフェースが求められる。今回は深圳優地の開発部門と日本の2社のソフトウェアハウスによる共同開発を経て、エレベータ搭乗が可能になった。

[エレベーターと連携して配送を行う優地ロボット]

3.スイングドア連動
今回のプロジェクトではエレベーターから店舗内に資材を配送するにあたり、もう一つ大きな関門を突破しなければならなかった。モール側バックヤードと店舗内の出入口、いわゆる従業員出入口である。ロボットがここを通過するためにはこのドアを自動化しなければならないが、このプロジェクトの為だけに高額の自動ドアを導入する事もできない。さまざまなソリューションが検討されたが、最終的にはドイツのドルマ社の技術である「スイングドアオペレーター」を使う事で、ロボットが自動で従業員出入口を突破する事に成功した。

4.複数ロボット同時稼働
広大な敷地内の複数テナントへの配送を行う為、複数ロボットを稼働させなければならず、使用するエレベーターは一基のみである為、ロボット同士がバッティングしたり、誤作動を起こしたりしないようオペレーションを構築する必要があった。それぞれのロボットが同時に稼働し、さらに複数の配送先へ資材を届けた上で、障害物を回避しながら戻ってくるというオペレーションは、現在の日本社会におけるロボット使用シーンの中でも最高峰の難度に挑み、成功させているといっても過言ではない。

5.愛くるしいインターフェース
最後にもう一点。優地テクノロジーは「日本市場では可愛いものが受け入れられる」という情報に基づき、上の写真にあるような愛くるしい顔を本プロジェクト向けのロボットに実装した。技術家集団で「かわいいもの」があまり得意ではない優地の開発スタッフたちにとって、実はこのインターフェースの開発は相当骨が折れたらしいが、「日本のユーザーの為に無理をして」開発したという。

このようにイオンモール白山の「自律走行ロボットを活用した館内配送サービスの実証実験」プロジェクトは数多くの「日本初」の難関に挑戦し、それらを解決した時代を先取りするプロジェクトであるといえる。日本語音声の収録を担当した弊誌編集部としても、このような意義あるプロジェクトに微力ながら貢献出来た事を大変誇らしく感じている。