【映像マニュアル制作日記①】絶対に階段から落ちないロボットの作り方

Agathon2022年8月17日(水曜日)

初めまして。Agathonと申します。テック業界で「映像マニュアル作家」という仕事をしております。読んで字のごとくさまざまなテック商品の技術者向けのマニュアルを「映像作品」として創っております。みなさんは、紙ベースのぶあついマニュアルを渡されて途方にくれた事はありませんか?私は「映像マニュアル」の制作を通じて、難しいロボットの操作や開発が、よりわかりやすく、楽しく進められるようになったらいいと思っております。この連載では私が映像マニュアルにかける思いや、実際に制作した感想などを皆さんとシェアできればと考えています。

さて連載第一回の今回は「絶対に階段から落ちないロボットの作り方」の映像マニュアルをお届けします。(実際のマニュアルは一時間近くの大作ですが、こちらは1分強の短縮版です。)

8月17日追記 こちらの動画をYouTubeのアガトンチャネルにもアップしました。よろしければチャネル登録を。

いかがでしょうか?モビリティロボットというものは、ソフトウェアで動くという特性上、ソフトウェアが暴走する、という危険はゼロではありません。手塚治虫の「火の鳥復活篇」にロボットの集団自殺という興味深いエピソードがありますが、システムの誤作動によりロボットが階段から飛び降りるというリスクはリアルな問題として存在しているわけなんですね。


(写真:火の鳥復活篇・飛び降り自殺するロビタ)

それを回避する為の安全装置をつくる。ここをちゃんとやっていないロボットは階段から転落してしまうかもしれない。そうすると見た目がかわいい猫ロボットでも殺人兵器になりかねない。そういう危険を回避する為の装置を作る必要がある。今回の動画はそういう安全装置の作り方の映像マニュアルなのです。そういえば昨日のロボティアの記事「医療搬送ロボットHOSPIの功罪④ HOSPI誕生の瞬間!」でも、パナソニックの技術者たちがロボットが階段から落ちないように、全力で取り組む一幕がありましたね。

ソフトウェアというものはバグや不具合がおこったり、暴走したりする可能性がある。なのでロボットに磁気センサーを取り付け、ロボットが磁気テープを感知したら非常停止ボタンが作動する。こちらの安全装置はそのようなシンプルな原理を利用しております。完成したBellabotは、階段の近くにいけば強制的に停止するようになります。

映像制作にあたって注意したのは、このマニュアルがなんのためにあるのか、という事を技術者さんに一目瞭然に理解して頂くことです。工程としては基盤作成→基盤とセンサーの接続→基盤やセンサーの取り付け→動作の確認という手順になりますが、最後にBefore-After動画をいれる事で、これらの一連の作業が「絶対に階段から落ちないロボット」をつくる為のものである事が、誰の目にも明らかになるよう工夫しました。工程一つ一つも大変ではあるのですが、各工程の詳細よりも全体の流れをつかむ事が、スムーズな制作につながります。

最後に一点。ロボットを解体し、内部をいじる様子というものに、どうしてこんなにドキドキしてしまうのでしょうか。手塚治虫の1963年の作品「鉄腕アトム・ロボット宇宙艇」の中でアトムが分解されるシーンがあり、私は子供心にその痛々しい姿にドギマギしてしまったものです。今回Bellabotが解体され、安全機構をとりつけるシーンを撮影する間、私は何かイケナイ事に立ち会っているような、複雑な気持ちになりました。


(写真:鉄腕アトム・ロボット宇宙艇より)





Agathon

記者:Agathon


[Agathonプロフィール] 北海道出身。幼少期よりシュタイナー教育を受けて育つ。広州暨南大学で中国語を、日本の某国立大学でロボット工学を学び、現在映像マニュアル作家。さまざまなテック商品の技術者向けのマニュアルを「映像作品」として創っております。テック系映像マニュアルの御用命はAgathonまで。