【コラム】ロボットの音声収録の楽しみと苦労(③無邪気で天真爛漫な子供の声を出すには)

ロボティア編集部2023年6月24日(土曜日)

(上写真)地元の中学校の演劇部部員を派遣してもらい、なんとか収録にこぎつけたものの、、、

海外のロボットメーカーの要請を受けて、音声収録を日本で行う時も苦労はつきものだ。米国や中国のロボットベンチャーの人々は時間がゆっくり流れる日本とは比較にならないほどせっかちな人が多く、金曜日午後に連絡が来て「日曜日の早朝までに納品してくれ」というような短納期仕事が多く、毎回、声優とスタジオの確保に苦労する。

先だっては、数日後のプレスリリースに間に合わせなければならない重要な音声収録に際して、派遣してもらった声優さんの声では「どうしても納得がいかない」と中国側のロボットメーカーの担当者が言い出すというトラブルがあった。ロボットメーカーの要求は「わざとらしくない、無邪気で天真爛漫な子供の声」というものだったが、要望そのものにも相当無理がある。が、そんな事をいっていてもしょうがない。

この要望に答えるため、スタッフは地元の中学校の演劇部に掛け合い、部員を数名派遣してもらい、なんとか急ごしらえのスタジオで収録を開始したところ、なんと統一地方選挙の最終日にバッティングしてしまい、防音壁を超えて選挙演説の声が収録されてしまい、何度も取り直しする事になってしまった。この時ほど日本の民主主義の象徴ともいえる選挙制度を恨めしく思った事はない。が、そんな事をいってもしょうがない。

最終的には、演劇部の皆さんがいい仕事をしてくれた事もあり、苦心の末にロボットメーカー側も納得し、最終クライアント側も納得のいく素敵な日本語音声に仕上がった。音声機器担当のスタッフが徹夜でノイズ処理を行って納品した事は言うまでもない。

日本社会にロボットを実装していく仕事は、常に「日本で初めて」の事が多く、その裏側にはこのような、思いがけなくもやりがいのある苦労がついて来るのである。レストランやショッピングモール、インテリジェンスビルを疾駆して日本語を話すロボットたちを見るにつけ、音声収録というこの裏方仕事を誇りに思わずにはいられない。