【コラム】ロボットの音声収録の楽しみと苦労(①素のロボットは日本語を話さない)

ロボティア編集部2023年5月13日(土曜日)

[写真:ロボティア編集部スタジオでロボット音声収録中]

「お食事をお持ちしました!」
「ロボットがエレベータに搭乗します。」
「危険ですので道をあけてください」
「ロボットが通るにゃん」

みなさんは、これらのロボットの「声」というものがどのようにしてロボットに実装されているかご存知だろうか。本日からは2回にわたってロボットの音声収録の楽しさと苦労についてのコラムをお届けする。

2023年5月現在、日本市場にはおよそ1万台のサービスロボットが走っており、おそらくはその大部分がレストランや焼き肉などの飲食店向け、ごく少数がショッピングモールやオフィスビルで稼働していると予想される。サービスロボットというものは、大抵の場合、ユーザーとコミュニケートする必要があり、ここ日本では日本語で日本人のユーザーに話しかけたり、返事をしたりする必要がある。ここで必要となって来るのが「ロボットの音声吹き替え」の問題である。

注目すべきなのが、日本国内で実用化され、販売されているロボットは少なく見積もっても過半数が外国製、特に中国製のロボットが多い。当然ながら最初は日本語対応されておらず、現地に実装するにあたって日本語化が必要となるのだが、この日本語化作業が一筋縄ではいかない。ロボティア編集部では、専門スタジオを設置しロボットの音声収録サービスを提供しているが、今年に入り、ロボットの声の収録の依頼が急激に増えており、スタジオがフル稼働状態となっている。

実はこれらの音声はもともとは中国語、英語で収録された元データをメーカーから受け取り、翻訳するところから始まる。それらのロボットが話す「ことば」は当然のことながら、日本の環境を考えて作られておらず、翻訳にあたっては実に悩ましい言葉使いがされている事が多い。たとえば以下のようなケースだ。中国優地テクノロジーの配送ロボット「優小妹」(優ちゃんM5)

中国語:哎呀!情义这东西,一见如故容易,难得的是来日方长的陪伴,世界那么大,能与您相遇,真幸运,我将陪您去目的地

これを直訳すると「あれまあ!人情というものは、初対面で意気投合する事よりも、長年の友情を育んでいく事のほうが難しいものです。この広い世界であなたと巡り会えた事は本当に幸運な事です。私はあなたと目的地までご同行いたします。」

という感じになるが、これをこのままロボットが話すと日本の消費者は面食らってしまうだろう。実際にこのロボットが使用されるイオンモール白山店の使用シーンにあわせて、我々は以下のように訳した。

「ロボットが配送を開始します。ご注意ください(2度くりかえし)」

次回記事[【コラム】ロボットの音声収録の楽しみと苦労(後編)]